
ほんの一言のはずだった
本当は、責めるつもりなんてなかった。
ただ、少しだけ聞きたかっただけ。
「私って、どういう存在?」
冗談みたいに、軽く言うつもりだった。
空気を壊さないように、笑いながら。
でも、声は思ったより静かで、
思ったより真剣だった。
彼の沈黙が、答えのように感じた
すぐに返ってこなかった言葉
彼は一瞬だけ黙った。
その沈黙が、
数秒なのに、やけに長く感じる。
「大事だよ」
そう言ってくれた。
でも、その言葉の先が続かなかった。
“一番”とは言わない優しさ
大事。
必要。
落ち着く。
彼は、間違ったことは言っていない。
でも、
“選ぶ”とは言わない。
“未来”とは言わない。
私は、その違いを
ちゃんと理解してしまった。
抑えていた本音が、止まらなくなる
「私ばっかりみたいで、つらい」
言うつもりじゃなかった言葉が、
口からこぼれた。
重いと思われたくなかった。
面倒だと思われたくなかった。
それでも、
もう限界だった。
会えない時間、
私はずっとあなたを考えている。
その事実を、
隠せなくなっていた。
彼は、困ったように笑った
怒らなかった。
否定もしなかった。
ただ、少し困った顔で言った。
「そんなつもりじゃないんだけどな」
その言葉が、
優しいのに、遠い。
私は初めて、
彼との間にある温度差を
はっきりと感じた。
言ってしまった後の、静かな後悔
空気が、少し変わってしまった
帰り道、
いつもより会話が少なかった。
壊れたわけじゃない。
でも、前と同じでもない。
私は、自分で
何かを動かしてしまった気がした。
それでも、言わなければ壊れていた
後悔はしている。
でも、
言わなければ、
きっと私はもっと削れていた。
強がるのも、
理解あるふりをするのも、
もう限界だった。
私たちは、どこへ向かうのか
彼の気持ちは変わらない
家庭を壊すつもりはない。
今の形が続けばいい。
きっと彼は、そう思っている。
でも私は、
もうその“今の形”のままでは
足りなくなってしまった。
地獄は、選択の段階に入る
このまま、
また笑って続けるのか。
それとも、
自分の気持ちを優先するのか。
初めて、
関係の行き先を考えなければならなくなった。
次回予告(第17話)
感情をぶつけたことで、
見えなかったものが見え始める。
彼の本音。
私の執着。
そして、“終わり”という言葉の影。
続きはまた次回。