『婚外恋愛』第19話 選ばなければいけない日

会えない時間

会えなくなって、三週間が過ぎていた。

連絡は続いている。

「おはよう」
「今日も忙しい」
「やっと落ち着きそう」

言葉はある。

でも——

前とは、違う。


埋まらない距離

やり取りをしていても、満たされない。

画面越しの言葉だけでは、
もう足りなくなっていた。

会っていた頃の感覚を、
体が覚えてしまっている。


久しぶりの約束

「少しだけなら会える」

そのメッセージを見た瞬間、
胸が苦しくなるくらい嬉しかった。

やっと会える。

そう思っただけで、
止まっていた時間が動き出す。


再会

久しぶりに乗った彼の車。

隣にいるだけで安心するのに、
同時に少しだけ緊張していた。

会えなかった時間が、
前とは違う空気を作っている。


足りなかった言葉

「ごめんね」

彼が、小さく言った。

その言葉だけで、
張っていたものが崩れそうになる。


本音

「このまま終わるのかと思った」

気付いたら、口にしていた。

言うつもりなんてなかった。

重くなりたくなかった。

でも、怖かった。

本当に。


初めて見る顔

彼は少し黙ってから、
静かに言った。

「俺も怖かった」

その顔は、
今まで見たことがないくらい苦しそうだった。


現実

「でも、家庭を壊すつもりはない」

その言葉で、空気が止まる。

分かっていた。

最初から分かっていたこと。


分かっていたはずなのに

苦しかった。

彼が悪いわけじゃない。

むしろ、正しい。

子供がいて、家庭があって。

守るものがある。

当然のこと。


それでも

じゃあ、私たちは何なんだろう。

ここまで気持ちが深くなって。

こんなに求め合って。

それでも、“選ばれない側”なんだろうか。


選ばなければいけない日

ずっと曖昧なままでいられると思っていた。

でも、本当は違った。

いつか必ず、現実は来る。


家庭か。

それとも、この恋か。


選ばなければいけない日が、
少しずつ近付いていた。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第18話 崩れるきっかけ

その日は、突然だった

「ごめん、しばらく会うの難しいかも」

送られてきたメッセージを、何度も読み返した。

短い文章。

でも、その一文だけで、
呼吸が浅くなる。


理由

子供のことで、家の空気が少し怪しい。

最近、帰りが遅いって言われた。

しばらくは慎重にしたい。

そう書かれていた。


現実

初めてだった。

“家庭”という現実が、
はっきりこの関係に入り込んできたのは。


分かっていたはずなのに

そんな日が来ることくらい、分かっていた。

お互い家庭がある。

子供もいる。

ずっと同じようには続けられない。

そんなこと、最初から分かっていたはずなのに。


思った以上に

頭では理解できる。

でも、感情が追いつかない。

「そっか」

そう返すだけで精一杯だった。


怖かった言葉

“しばらく”

その言葉が、やけに怖かった。

一週間なのか。
一ヶ月なのか。

それとも——

もっと長いのか。


空いた場所

会えなくなっただけで、
生活の感覚が変わる。

時間が余る。

でも、その余った時間を、うまく使えない。


家にいるのに

子供と話していても、
夕飯を作っていても。

頭のどこかで、彼のことを考えている。

今、何してるんだろう。

同じように苦しいんだろうか。


温度差

ふと、不安になる。

私だけだったらどうしよう。

私だけが、こんなに苦しくて。

彼はちゃんと家庭に戻れていたら。


崩れ始める

会えていた時には見えなかったものが、
少しずつ見え始める。

この関係の不安定さ。

保証なんて、どこにもないこと。


それでも

終わりだとは思いたくなかった。

思った瞬間、
本当に終わってしまいそうで。


だから私は、
何も聞けなかった。

「待ってる」

その一言さえ、
重くなりそうで言えなかった。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第17話 ずっと続くと思っていた

当たり前になりすぎていた

いつからだろう。

この関係が終わるかもしれない、なんて。

考えなくなっていた。


次がある前提

「また来週ね」

その言葉を、疑ったことがない。

会える日を決めて、
いつもの駅で待ち合わせて、
いつものように彼の車に乗る。

その流れが、ずっと続く気がしていた。


少しの変化

でも最近、少しだけ違う。

連絡が遅い日がある。

仕事が忙しいと言われる回数が増えた。

会えている。
ちゃんと会えている。

それなのに——

前みたいに安心できない。


考えたくないのに

「もし終わったら」

ふと、その考えが浮かぶ。

すぐに打ち消す。

考えても意味がない。

でも、一度浮かんだ不安は、簡単には消えない。


依存

前は、自分の生活がちゃんとあった。

子供のことをして、
家のことをして、
その中に彼がいた。

でも今は違う。

彼との時間を中心に、
全部が回っている。


なくなった時

もし、この関係がなくなったら。

そう考えた瞬間、
胸の奥がざわつく。

空っぽになる感覚が、想像できてしまう。


怖いのは終わりじゃない

終わることより怖いのは。

終わったあと、
元の自分に戻れる気がしないことだった。


気付いてしまった

私はもう、“刺激”を求めているんじゃない。

彼自身を求めている。


失いたくない

だから、怖い。

少しの違和感だけで、不安になる。

返信ひとつで気持ちが揺れる。

そんな自分になってしまった。


ずっとなんてない

本当は分かっている。

“ずっと”なんて、ないこと。

家庭があって、
現実があって。

この関係が永遠じゃないことくらい、
最初から知っていたはずなのに。


それでも私は、どこかで信じていた。

この時間だけは、
ずっと続くんじゃないかって。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第16話 ふと感じた違和感

小さなズレ

最初は、本当に小さなことだった。

「ごめん、今日は少し遅れる」

ただ、それだけ。

仕事をしていれば普通にあること。
今までだって、何度もあった。

なのに——

なぜか少しだけ、引っかかった。


待つ時間

待ち合わせの駅で、スマホを見る。

まだ既読にならない。

ほんの数分。

それだけなのに、
落ち着かない。


考えなくていいこと

仕事かもしれない。
電話中かもしれない。

頭では分かっている。

でも、考え始めると止まらない。


違和感の正体

前なら、こんなことで揺れなかった。

会えれば、それでよかった。

彼がそこにいてくれれば、
それだけで満たされていた。


欲張りになった

いつからだろう。

“会えるだけでいい”じゃなくなったのは。

返信の速さ。
声のトーン。
ちょっとした空気。

そんな細かいことばかり、気になるようになっている。


会えたのに

その日も、ちゃんと会えた。

いつも通り車に乗って、
いつも通り隣にいる。

触れられると安心する。

でも——

どこか少しだけ、違う。


気のせい

たぶん、気のせい。

疲れているだけかもしれない。

考えすぎだって、自分に言い聞かせる。


笑っているのに

彼はいつも通り笑っている。

会話も普通。
態度も変わらない。

なのに、自分だけが勝手に不安になっている気がした。


言えない

「なんか今日、少し違う?」

そんなこと、聞けるはずがない。

重いと思われたくない。

面倒な関係には、なりたくない。


崩れ始める時

幸せな時間の中に、
ほんの少しだけ混ざった違和感。

それは小さいのに、妙に残る。


気付かないふりをしているけど。

本当はもう、分かっている。


好きになればなるほど。

失うことが、怖くなっていく。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第15話 このままでいい

未来なんて考えていなかった

最初は、本当に軽い気持ちだった。

少し刺激がほしかっただけ。
日常から逃げたかっただけ。

こんなふうになるなんて、思っていなかった。


気付けば

気付けば、生活の中に彼がいる。

週に一度か二度、会う時間。

その予定があるだけで、
一週間の感じ方が変わる。

会える週は、少し頑張れる。

会えない週は、どこか物足りない。


先のことは分からない

この関係に未来があるのかなんて、分からない。

たぶん、普通に考えたらない。

お互い家庭があって、
子供もいる。

現実的じゃないことくらい、ちゃんと分かっている。


それでも

それでも——

今、失いたくないと思う。

終わることを想像した瞬間、
胸の奥が少し苦しくなる。


欲しくなっていく

最初は、“会えればいい”だけだった。

でも今は違う。

もう少し一緒にいたい。
もう少し知りたい。

少しずつ、欲張りになっていく。


当たり前の存在

彼から連絡が来る。

それだけで安心する。

「おはよう」
「今向かってる」

そんな何気ない言葉が、
いつの間にか日常に入り込んでいる。


壊したくない

重くなりたくない。

面倒な女にもなりたくない。

だから、未来の話はしない。

でも本当は、少しだけ聞いてみたくなる。

この先も、ちゃんと会えるのか。

私たちは、どうなるのか。


口にしないまま

聞かない。
確かめない。

その方が、この関係は続く気がしているから。


今だけでいいはずなのに

“今だけ”で始まったはずだった。

なのに——

気付けば、“このまま”を望んでいる。


終わりが来ることを、考えたくない。

考えた瞬間、
全部が壊れてしまいそうで。


だから今日も、何も聞かない。

ただ彼の隣で、
この時間が続くことだけを願っている。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第14話 家にいるのに、帰りたい

いつもの夜

「ただいま」

そう言って家に入る。

子供たちの声がして、
夕飯の準備をして、
いつもの夜が始まる。

何も変わらない。

変わっていないはずなのに——

どこか、遠い。


隣にいる人

夫はいつも通りだった。

今日あったことを話して、
テレビを見て、
当たり前みたいに同じ空間にいる。

前は、それが普通だった。


比べたくないのに

比べたくない。

そんなこと、してはいけないと思う。

でも、気付けば比べている。

空気。
会話。
沈黙。

全部。


軽くなってしまったもの

前は、ちゃんとここにいたはずなのに。

家族の時間を大切にして、
妻として過ごしていたはずなのに。

今はどこか、感覚が薄い。

ちゃんと笑っている。
ちゃんと返事もしている。

でも、心だけが少し離れている。


思い出してしまう

彼といる時間を思い出す。

車の中の空気。
何気ない会話。
隣にいる時の安心感。

思い出した瞬間、
今ここにいる自分との温度差に気付いてしまう。


触れられたくない

夫に悪気はない。

それは分かっている。

でも、近付かれると少しだけ身構える。

触れられそうになると、
反射的に距離を取ってしまう自分がいた。


帰る場所

ここが、帰る場所のはずなのに。

ちゃんと守ってきた場所のはずなのに。

なのに——

最近、落ち着く場所を思い浮かべると、
最初に浮かぶのは彼の隣だった。


気付いてはいけないこと

気付いたら終わる気がして、
ずっと考えないようにしていた。

でも、もう誤魔化せない。


変わってしまった

私はたぶん、もう戻れない。

ただ刺激に溺れているだけだと思っていた。

でも違った。


彼といる時間が、特別なんじゃない。

今の私にとって——

あっちの方が、“自然”になってしまった。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第13話 言葉にしない約束

「好き」を言わない理由

不思議なくらい、ちゃんと伝わっていた。

わざわざ確認しなくても。
言葉にしなくても。

彼が会いたがっていることも、
私を求めていることも。

全部、分かってしまう。


軽くしたくなかった

「好き」

その言葉を使ってしまうと、
急に安っぽくなる気がしていた。

簡単に口にした瞬間、
この関係の温度が変わってしまいそうで。

だから、お互い言わなかった。


でも、伝わる

会えば分かる。

視線の向け方。
触れるタイミング。
離れる時の空気。

言葉なんかなくても、
十分すぎるくらい伝わっている。


優先してしまう

「今週、どこかで会える?」

その一言で、予定を調整する。

子供の予定。
家のこと。
夫の帰宅時間。

全部を見ながら、
彼との時間を先に確保している自分がいる。


彼も同じ

彼も、仕事の予定を動かしていた。

「午後なら空けられる」

「その日は時間作れる」

そんなふうに、自然に合わせてくる。

無理している感じがないのが、余計に怖い。


言葉より確かなもの

“会う”という行動そのものが、答えになっていた。

忙しい中で時間を作ること。

会えない週があるだけで寂しくなること。

また会った瞬間、安心すること。

それ全部が、
もう十分すぎるほど気持ちを表している。


未来の話はしない

お互い、未来の話はしなかった。

離婚するとか。
一緒になるとか。

そういう現実的な話は、一度も出ていない。


それでも

不安がないわけじゃない。

でも、今のこの関係を壊したくなかった。

変に名前をつけて、
重くしたくなかった。


暗黙のルール

深く聞きすぎない。
無理に確かめない。

でも、ちゃんと会う。

そのバランスが、
不思議なくらい心地よかった。


約束なんてないのに

「ずっと一緒にいよう」

そんな約束はしていない。

好きとも言っていない。

なのに——

次も会うことを、疑っていない。


言葉にしていないだけで。

私たちはもう、
十分すぎるほど繋がっていた。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第12話 彼も同じだった

戻った時間

会えなかった週が終わって、
やっと、いつもの流れが戻った。

数駅離れた場所で待ち合わせて、
彼の車に乗る。

いつもと同じ景色なのに、
少しだけ久しぶりに感じた。


一週間ぶり

「なんか、久しぶりな感じするね」

彼がそう言って笑う。

たった一週間。

それだけなのに、
少しだけ遠かった気がした。


軽い言い方

車の中で、ふと聞かれる。

「寂しかった?」

冗談みたいな言い方だった。

でも、本気で聞いているのが分かる。


隠しきれない気持ち

少し迷ってから、答えた。

「ちょっとだけ」

本当は、もう少しあった気がする。

でも全部は言えなかった。


同じだった

彼は、小さく頷いて。

「俺も」

そう言った。


安心

その一言で、力が抜けた。

自分だけじゃなかった。

同じように感じていた。

それが分かっただけで、
こんなにも安心するなんて思わなかった。


埋まる空白

部屋に入って、
いつもの距離に戻る。

触れられた瞬間、
空いていた時間が埋まっていく。

何も言わなくても分かる。

同じように、会いたかったこと。


落ち着く場所

「やっぱり落ち着くね」

彼がそう言う。

何気ない言葉なのに、
少しだけ胸に残った。


自分だけじゃない

ここが落ち着く場所になっているのは、
自分だけじゃない。

その事実が、静かに嬉しかった。


確信

会えなかった時間さえ、
意味があったように思える。

離れていたからこそ、
分かったことがある。


この関係は、ちゃんと続いている。

そう思ってしまった。


同じ温度で、
同じ気持ちで。

彼も、ここにいる。

そう信じられたことが——
何より安心だった。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第11話 会えない週が全てを狂わせる

崩れたリズム

その週は、会えなかった。

いつもなら、どこかの曜日で会っている。

自然に始まったはずなのに、
いつの間にか、それが当たり前になっていた。


たった一週間

「今週は難しいかも」

彼から来たメッセージ。

仕方がない理由だということは、分かっていた。

仕事の都合。
外せない予定。

責めるようなことじゃない。


思った以上に

それなのに——

思っていたよりも、引っかかった。

たった一週間。

それだけのことなのに。


落ち着かない

前なら、平気だったはずなのに。

少しくらい間が空いても、
こんなふうにはならなかった。

でも今は違う。

リズムが崩れるだけで、落ち着かない。


本当なら今ごろ

時計を見るたび、考えてしまう。

本当なら、今ごろ会っている時間。

車の中で話して、
もう部屋に入っている頃。

そんな想像ばかりが浮かぶ。


足りない

連絡は来る。

やり取りも、いつも通り。

でも——
足りない。

文字だけでは、埋まらない。


会える前提

少し前まで、これが普通だったはずなのに。

会わない日常。
それが、もう思い出せない。


気付いてしまった

私は——

この“会える前提”に、慣れすぎていた。

当たり前にあると思っていたから、
なくなった時に初めて分かる。


崩れていく感覚

たった一週間、会えないだけで。

こんなにも気持ちが揺れるなんて。


これは、ただ会いたいだけなんだろうか。

それとも——
もう、戻れないところまで来ているんだろうか。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第10話 普通になってしまった

気付けば、考えなくなっていた

前は、少しだけ迷っていたはずなのに。

これでいいのか。
どこまで進んでしまうのか。

どこかで引っかかっていた感覚が、確かにあった。

でも今は——
もう、何も思わない。


特別じゃなくなった関係

彼に会うことを、特別だと思わなくなっていた。

予定を合わせることも、
時間を作ることも、
全部が自然にできてしまう。

無理をしている感覚がない。


会う理由

「会いたい」

その気持ちに、理由を探さなくなった。

寂しいからでもない。
刺激がほしいからでもない。

ただ、会う。

それだけで、一日がちゃんと整う。


終わりを意識しない

前は、帰る時間が少しだけ寂しかった。

でも今は違う。

「また会える」が前提になっている。

だから、終わりを終わりだと思わなくなった。


途切れない感覚

会っている時間も、
会っていない時間も。

完全には離れていない気がしている。

やり取りがなくても、
どこかで繋がっている。

そんな感覚が、当たり前になっていた。


消えてしまった境界線

おかしいことをしている。

その事実だけは、ちゃんと分かっている。

でも——

分かっているだけだった。

そこに痛みも、罪悪感も、
ほとんど残っていない。


慣れてしまった

たぶん、慣れてしまったんだと思う。

彼がいることに。
この関係に。
この時間に。


失いたくないもの

それでも、ひとつだけ確かなことがある。

失いたくない。

はっきり言葉にしなくても、
それだけは分かる。


普通の定義

どこからが普通で、
どこまでが間違いなのか。

もう、その線が分からない。


ただ——

このままでいたい。

そう思っている自分だけが、
やけにはっきりしていた。

続きはまた次回。