2025年 12月 の投稿一覧

『この恋は甘い地獄』第5話 一線を越えそうで越えない夜のこと

「会わない?」の一言が、思っていたより重かった

彼との連絡が日常に溶け込んできた頃、
突然彼からこんなメッセージが届きました。

──「今週、仕事早く終わる日ある?」──

それだけなのに、胸の奥がじわっと熱くなるのを感じました。
“会いたい”と言葉にしていないのに、
その意図がなんとなく伝わってしまう、あの空気。

この頃には、
彼とのメッセージを楽しみにしていたことを
素直に認めざるを得ませんでした。


再会を重ねるたびに、距離が縮まっていく

仕事の帰り、時間を合わせて彼と会いました。
特別な場所でもなく、普通のご飯屋さん。
いつもと変わらないはずの空気なのに、
前よりも向かい合う時間が静かに心に入り込んでくるようでした。

話す内容は相変わらず普通なのに、
なぜか「普通ではない感じ」が漂う瞬間があります。

彼がふと真面目な顔になった時とか、
笑った拍子に視線が合ったまま少し長くなる時とか。

お互い、意識していないふりをしながら、
実はどこかで探り合っている感じ。


近づきすぎた瞬間

食事のあと、駅まで一緒に歩きました。

夜風が少し冷たくて、
彼が「寒くない?」と何気なく気遣ってくれた瞬間、
ほんの数秒、心がふわっとほどけるような感覚がありました。

手を繋ぐわけでもない。
何か起きたわけでもない。
でも、一歩でも間違えれば距離が変わってしまう
そんな空気が確かにありました。

その空気はきっと、
彼も同じように感じたと思います。


駅に着いた瞬間の、あの沈黙

駅の入り口に着いたとき、
彼が少しだけ歩く速度をゆっくりにしたのを感じました。

別れたくないとか、
もっといたいとか、
そんなはっきりした言葉はないけれど、

「このまま別れていいのかな」
そんな迷いがほんの一瞬、ふたりの間に流れたような気がしました。

でも結局、ふたりとも言葉にできませんでした。

ただ、
「今日はありがとう。また話そ」
とだけ交わして、それぞれの方向に歩き出しました。

背中を向けた瞬間、
胸の奥がじんわりして、
自分でもよくわからない気持ちだけが残りました。


一線は越えていない。でも、越えかけている

家に帰る電車の中で、
彼から「今日は楽しかった」とメッセージが届きました。

その短い一文が、妙に胸に残ります。

たぶん、
ふたりとも一線を意識しながら、
まだ踏み込まないように気をつけている。

でもその「まだ」が、
逆にドキドキを大きくしているのかもしれません。

今思えば、
この時がいちばん危ない時期だった気がします。

何も起きていないのに、
心の距離だけが勝手に縮まっていく。
そんな時期です。


次回予告:第6話

次の話では、
“まだ”と“もう”の境目が、ふいに消えてしまった夜について書きます。

お互い、気づかないふりをしてきた距離感。
守っていた一線。
その全部が、ほんの些細なきっかけで揺らいだ瞬間。

気持ちが先だったのか、
身体が先だったのか。
自分でもはっきりわからない夜、、、

続きはまた次回。

『この恋は甘い地獄』第4話 再会の日、思っていたより普通で、思っていたより特別

約束の日が近づくにつれて

彼と「また会おう」と決めてから、その日までは案外あっという間でした。
家事をこなし、仕事をこなしているいつもの毎日の中に、
“彼と会う”という予定だけが、ぽつんと光るように存在していました。

浮かれているわけじゃないのに、
その日が近づくたびに、なんとなく胸のあたりがざわつく。
忘れたいのに、忘れたくない。
そんな変な気持ちがずっとありました。


待ち合わせ場所に向かう道

当日。
支度をして、少し早めに家を出ました。

特別おしゃれをしたわけではありません。
いつもより少しだけ丁寧なメイク、少しだけ落ち着いた服。
その「少しだけ」に、自分の気持ちが出ている気がして、
歩きながら苦笑い。

待ち合わせ場所に近づくにつれて、
鼓動が少しだけ早くなるのを感じました。
恋のドキドキというより、
「久しぶりの再会に緊張しているだけ」
と言い聞かせながら。


ふと目に入った“彼の姿”

待ち合わせの場所に着いて、
人混みの中に立っている彼を見つけた時。

「あ、いる。」

その瞬間の感覚は、思ったよりも淡々としていました。
もっと劇的な気持ちになるかと思っていたけど、
現実は案外静かで、ただ懐かしいだけ。

でも、不思議なことに—
少しだけ胸の奥が温かくなるのを感じたのも事実。

彼もこちらに気づいて、軽く手をあげてくれました。
その仕草が昔と変わっていなくて、
“あぁ、この人はあの頃の彼のままだ”
と、どこか安心するような感覚がありました。


ぎこちない近況報告と、自然に戻る空気

久しぶりに会ったからか、最初の数分は少しぎこちない空気でした。

天気の話、仕事の話、共通の友人の近況。
どれも特別な内容ではありません。

でも、10分も経たないうちに、
空気がゆっくりと昔の雰囲気に戻っていくのがわかりました。

学生時代の話になると、思わず笑ってしまうような懐かしさが込み上げてきて、彼も同じように肩の力が抜けていくのがわかりました。

“あぁ、この人と話すときはこんな感じだったな”
そんな記憶が自然に戻ってくる。
その感じが妙に心地よい。


特別じゃない時間が、特別に思える

食事をしながら話していると、
気づけば時間があっという間に過ぎていました。

特にドキッとするようなことを言われたわけでもないし、
手を触れられたわけでもありません。
本当にただの“再会した同級生”との時間。

なのに…

帰り道、ひとりで歩きながら、
静かに胸の奥が熱いような、ざわざわするような、
言葉にしづらい感覚がありました。

「また会いたい」
そう思った瞬間、自分で少し驚きました。

理由なんてまだよくわからない。
でも、今日の時間が悪くなかったから。
それだけで充分でした。


再会してみて感じたこと

会う前はあれこれ考えてしまっていたけれど、
実際に会ってみたら、特別なドラマなんて何も起きませんでした。

けれど、
“何も起きなかったからこそ、また会いたくなる”

そんな不思議な気持ちを、
久しぶりに味わったのです。


次回予告:第5話
次回は、
“再会後、連絡が当たり前になっていく”
あの静かな変化について書いていきます。

曖昧なのに心地よくて、
気づかないうちに距離が縮まってしまう、、、

続きはまた次回。

『この恋は甘い地獄』第3話 止まらないメッセージの波

同窓会の夜から始まった、毎日のやり取り

同窓会で彼と再会してから、
日常が少しだけ賑やかになりました。

最初は「昨日はありがとう」
それくらいの軽い連絡だったはずなのに、
翌日にはもう昔話や仕事のことまで話すようになっていました。

彼のメッセージは不思議と心地よく、
読んでいて疲れない、安心感があります。

既読をつければすぐに返ってくるそのテンポも、
どこか昔の空気に戻ったようで、懐かしく感じていました。


胸に残った、彼のふとした一言

ある夜、ふと届いた一言が、
思った以上に胸に残りました。

「今日も話せてよかった。また明日も話したい」

学生の頃、感情を言葉にするタイプではなかった彼からのその言葉に、
少し驚きながらも、じんわり嬉しくなってしまいました。

気がつけば、反射的に返信していました。

「うん、また明日ね。なんか懐かしくて楽しいね。」

画面を閉じたあと、
布団の中で小さく笑ってしまったのは、内緒です。


彼との距離が、静かに近づいてくる

それからの彼は、
少しずつ踏み込んだ言葉を送ってくるようになりました。

「今度さ、ゆっくり話せる時間つくらない?会って話したい。」

画面を見た瞬間、胸がドキッと鳴りました。

大人になった今は、
勢いだけで動けるわけではありません。

それぞれに事情もあるし、
慎重にならなきゃいけない気持ちも、ちゃんとありました。

それでも、
彼と話す時間があまりに自然で楽しくて。

一度深呼吸をしてから、返信しました。

「うん。会おうか」

その瞬間、胸の奥がふわっと熱くなりました。
でも、不思議と後悔はありませんでした。


眠れなかった夜と、少しのときめき

その夜は、なかなか眠れませんでした。

布団に入りながら、
再び彼に会う日のことを考えてしまって。

同窓会に行く前は、
こんな展開になるなんて、思いもしなかったのに。

人生って、
時々こんなふうに、急に動き出すから不思議です。

少しだけ。
本当に少しだけ、
次に会う日が楽しみになっていました。


次回予告:第4話

次回は、
約束した再会の日について書こうと思います。

久しぶりに顔を合わせた彼は、
思っていたよりも普通で、
思っていたよりも特別でした。

何も起きないはずだった再会が、
少しずつ心の距離を変えていく――

続きはまた次回。

『この恋は甘い地獄』 第2話 同窓会の夜に、静かに始まる揺れ


前回、不倫がどのように始まるのかを書きました。
衝動ではなく、静かに、気づかないうちに心が傾いていく——そんな曖昧な始まり。

その“曖昧さ”は、
実はとても普通の出来事からでした。

地元で行われた同窓会。
懐かしい名前が並ぶグループLINEを見たとき、
あの日の夕焼けや、放課後の廊下の匂いまで思い出したのを覚えています。

ただ、それだけ。
ただの同窓会のはずでした。


懐かしさだけのはずだった再会

会場のホテルのロビーは同級生たちの声で賑やかで、
挨拶を返しながらも、どこか夢の中にいるような気分でした。

ほんの数時間だけ、
大人になった自分と、
高校生の頃の自分が混じり合うような、不思議な感覚。

そのなかで、
ふと視線が合った人がいました。

当時、特別仲が良かったわけでも、
憧れていたわけでもありません。

ただ、話すと安心するような、
少し落ち着いた雰囲気の人。

「久しぶりだね」の一言が、
なぜか胸に柔らかく残りました。

それだけのはずでした。


日常に戻ったはずなのに、消えないざわつき

同窓会の翌朝は、少しだけ頭が重く、
でも心は妙に静かでした。

ふだん通りに家のことをして、
仕事の準備をして、
いつもと変わらない一日が始まるはずでした。

なのに——

前夜の何気ない会話や、
同級生たちの笑顔が
断片的に思い出されてしまう。

特に、あの人の落ち着いた声が
なぜか耳の奥に残って離れない。

恋というほど強いものではなく、
興奮でもなく、
ただ、小さなざわつき。

“あれは何だったんだろう”

そう思いながらも、
深く考えるほどのことではない、と自分に言い聞かせました。

この「自分に言い聞かせる」という行為が、
後から思えば、少し心が揺れていた証拠なのかもしれません。


彼から届いたメッセージ

同窓会から数日後の昼下がり。
仕事の休憩中、スマホを開くと、
彼から短いメッセージが届いていました。

お礼のような
気遣いのような
誰に送ってもおかしくない内容。

でも、なぜか胸の奥がほんの少しだけ温かくなる。

返信しようかどうか迷ったわけではありません。
自然に、手が動きました。

「これくらいなら普通」
「同窓会の延長みたいなもの」

そんな風に軽く考えていたはずなのに、
メッセージを送ったあと、
少しだけ心が落ち着かない自分がいました。

その理由は、まだ見えていませんでした。


始まりはいつも静かで、気づきにくい

この時点ではもちろん、
不倫なんて意識していません。

ただの懐かしさ。
ただの同窓会。
ただの連絡。

どれも、言い訳できる程度の軽さ。

でも、境界線はこうして少しずつ薄くなります。
日常のほころびから、
そっと入り込んでくるように。

“特別じゃないのに、忘れられない”

その感覚こそが、
静かな始まりだったのだと今になって思います。


■次回予告:「連絡が日常に変わるとき」

次回は、
ほんの挨拶だけのやり取りが
なぜか毎日の習慣に変わっていく瞬間について書こうと思います。

・返信が早くなる
・相手の言葉を読み返す
・メッセージが来ないと落ち着かない

そんな、ごく小さな心の揺れ–

続きはまた次回。

『この恋は甘い地獄』第1話 人はなぜ不倫をしてしまうのか


不倫という言葉を聞くとよみがえる一文

私は「不倫」という言葉を聞くと、いつも東野圭吾さんの『夜明けの街で』の一文を思い出します。

「この恋は甘い地獄。彼女が天使とは限らない。
不倫する奴なんてバカだと思っていた。
でもどうしようもない時もあるーー。」

この“どうしようもない”という感覚は、不倫心理そのもののように胸に残ります。


なぜ人は不倫してしまうのか——その静かな始まり

不倫は衝動ではなく、ゆっくり始まる

多くの人は「不倫は衝動で起こる」と思っていますが、実際の不倫のきっかけはもっと静かで曖昧です。
ドラマのように劇的ではなく、気づいたときには心が溺れている──それが現実です。

甘いもののように抗えない魅力

夜中にどうしても食べたくなる甘いもののように、
「やめておこう」と思いながらも、ひと口食べると、もう後戻りはできません。

それと同じように、不倫にも“抗えない甘さ”があります。
禁じられている恋ほど心を奪い、リスクがあるほど鼓動が早くなるのです。


不倫が始まる瞬間は劇的ではない

きっかけはほんの些細な会話

一線を越える瞬間は、特別な出来事ではありません。
大抵は、何気ない会話から始まります。

  • 特別な視線ではない
  • 意味深な仕草でもない
  • 日常の延長にあるようなやり取り

しかし、その些細なやり取りが積み重なることで、
ある瞬間に“理性の薄い膜”が破れてしまうのです。


人が不倫に惹かれてしまう心理

「自分を見てほしい」という静かな欲求

人は心のどこかで、誰しも
「自分をちゃんと見てほしい」
と願っています。

家庭では役割をこなし、
職場では責任を背負い、
誰かのために動き続けていると、

「自分が透明になってしまったように感じる瞬間」が訪れます。

その透明感を溶かしてくれるのが、
ときに“してはいけない相手”なのです。


心理学で見る“不倫に惹かれる理由”

ここで心理学的な視点を一つだけ挙げるなら、
寂しさが限界に達したとき、人は「自分を救ってくれそうな相手」に強く惹かれる と言われています。

恋かどうか曖昧なまま、
ただその相手に寄りかかりたくなる。

その寄りかかりは、想像以上に甘く、危険で、心地よいのです。


「このくらいなら…」が積み重なる危険性

小さな言い訳は、最初はただの気休めです。

  • 「このくらいなら大丈夫」
  • 「一瞬だけなら」

その積み重ねが、気づかぬうちに“戻れない関係”をつくりあげていきます。

不倫とは決して単純な背徳ではなく、
人間の弱さと温度が混じった複雑な感情だと思っています。


次回予告:不倫が始まる“あの瞬間”について

次回は、
不倫が始まってしまうときの“瞬間”
について書こうと思います。

甘さと危うさが入り混じり、
少しずつ現実が歪んでいくあの感覚。

地獄なのに、なぜか温かい——

続きはまた次回。