2026年 2月 の投稿一覧

『この恋は甘い地獄』第11話 二人だけの世界が現実を曖昧にする

彼も、私との時間を選んでくれる

期待に応えてくれているのか、それとも本心なのか

最近、彼は以前よりもはっきりと
「一緒に過ごす時間」を作ってくれるようになりました。

仕事の合間だけじゃなく、
週末に時間を空けてくれたり、
泊まりがけで出かける予定を立ててくれたり。

それが
期待に応えようとしてくれているのか、
それとも本当に一緒にいたいと思ってくれているのか。

考えても、答えはわからないけど。
少なくとも
選ばれている時間がある
その事実が、私を安心させていました。

予定を共有するだけで、心が浮き立つ

旅行の日程を決めて、
宿を探して、
どこに行くかを話す。

それだけのことなのに、
胸の奥が少し弾む。

まるで、
普通の恋人同士みたいだと感じてしまう自分がいました。


夫婦に見られることが、嬉しい

誰にも気づかれない、でも確かにそこにある幸福

旅先では、
誰も私たちの事情を知りません。

隣を歩けば、
自然に夫婦やカップルだと思われる。

お店で二人分の食事を頼み、
同じ部屋に泊まり、
同じ朝を迎える。

その空間の中では、
私たちは「いけない関係」ではありませんでした。

その視線が、心を満たしてしまう

誰かに
「奥さんですか?」
と聞かれるわけでもない。

でも、
そう見られている気がするだけで、
心が満たされていく。

それを嬉しいと感じてしまう自分を、
止めることができませんでした。


一緒にいる間だけ、世界が完結する

現実を忘れてしまうほどの安心感

彼と一緒にいる時間は、
驚くほど穏やかでした。

疑うことも、
不安になることも、
未来を考えることもない。

ただ、
今この瞬間だけが続けばいい。

そんなふうに思えてしまうほど、
心が静かに満たされていきます。

「幸せだ」と、はっきり思ってしまう

いけないことだと、
ちゃんとわかっています。

正しくない関係だとも、
理解しています。

それでも、
一緒にいる時間と空間は、
私にとって
世界で一番幸せだ
そう思えてしまうのです。


幸せが深いほど、戻れなくなる

この時間が、永遠じゃないことも知っている

週末が終われば、
それぞれの現実に戻る。

そのことも、
もちろんわかっています。

でも、
わかっていることと、
受け入れられることは、別でした。

幸せを知ってしまった代償

こんな時間を知ってしまったら、
もう、
何もなかった頃には戻れない。

幸せが深くなるほど、
失う怖さも増えていく。

それでも私は、
この関係を手放す勇気を
まだ、持てずにいました。


次回予告

次回は、
「幸せの裏で、静かに増えていく不安」

一緒に過ごせば過ごすほど、
見えなくなっていた現実が、
少しずつ顔を出し始めます――

続きはまた次回。

『この恋は甘い地獄』第10話 もう戻れない場所に立っていた

「家庭は壊さない」という言葉に、しがみつく

彼には、奥さんがいる

その事実は、最初から変わっていません。
わかっていて、始めた関係です。

だから、
「家庭を壊すつもりはない」
その言葉を、何度も心の中で繰り返していました。

それは理性というより、
自分を保つための言い訳だったのかもしれません。

奥さんは「女性」じゃないと思いたい

彼が話す奥さんの存在を、
いつの間にか、
**「妻」ではなく「家族」**として受け取るようになっていました。

もう恋愛感情はない。
女としては見ていない。
一緒に暮らしているだけ。

そう思えたほうが、
自分の立場が、少しだけ安全になるからです。


「愛されているのは私」だと思いたくなる

彼の優しさが、判断を鈍らせる

彼の言葉も、触れ方も、目線も、優しい。

その一つ一つが、
「選ばれているのは私だ」
そう思わせるには、十分すぎました。

比べるつもりなんてなかったのに、
いつの間にか、
自分のほうが“女性として愛されている”
そう信じたくなっていました。

奥さんとは、体では繋がっていないと信じたい

会えない夜、
ふと浮かぶ想像を、必死に打ち消します。

奥さんと、どんな距離なのか。
同じベッドで眠っているのか。
触れているのか。

考えたくない。
だから、
「もう、そういう関係じゃないはず」
と、自分に言い聞かせる。

真実かどうかより、
そうであってほしいという願いでした。


バレたら困る。でも、やめられない

現実的な恐怖は、ちゃんとある

軽率なことはできない。
痕跡は残さない。
誰にも気づかれないように。

その意識は、ちゃんとあります。

失うものがあることも、
壊してはいけないものがあることも、
理解しているつもりでした。

それでも、欲望は理性をすり抜ける

でも、
彼からの連絡を待つ時間。
会えない日の長さ。

その一つ一つが、
理性を少しずつ削っていきました。

「ダメだ」と思うほど、
「会いたい」が強くなる。

欲望は、
叫ばない。
暴れない。

ただ静かに、
確実に、
判断力を壊していくのです。


ハマっていると、わかってしまった瞬間

自分でも、止められないと気づく

これは恋なのか、
依存なのか、
それとも、ただの逃げ場なのか。

もう、はっきりとはわかりません。

ただ一つ、
確かなことがあります。

私はもう、
この関係に
深く、ハマってしまっている

地獄だとわかっていて、抜けられない

家庭は壊さない。
バレたら困る。
正しくない。

すべて、わかっています。

それでも、
彼に愛されていると思いたい自分を、
止めることができない。

ここが地獄の入り口だと、
はっきりわかっているのに。

もう、
戻れない場所に立っていました。


次回予告

次回は、
**「幸せが深くなるほど、不安も育っていく」**

一緒に過ごした時間が増えたことで、
見ないふりをしていた現実が、
少しずつ輪郭を持ちはじめます。

満たされているはずなのに、
なぜか安心できない。

この幸福が、
いつまで続くのかを考えてしまうーー

続きはまた次回。