2026年 2月 の投稿一覧

『この恋は甘い地獄』第13話 言えない不安が、態度に滲み出る

気づかないふりをしていた違和感

何気ない一言が、引っかかる

彼とのやり取りは、表面上は何も変わっていませんでした。
連絡も来るし、言葉も優しい。

それなのに、
以前なら気にならなかった一言が、
胸に引っかかるようになっていました。

返事のトーン。
少し遅れた返信。
短くなった文章。

「考えすぎ」
そう言い聞かせても、
心が納得していません。

不安の正体が、わからないまま

理由がはっきりしていれば、
対処のしようもあります。

でも、この不安には
名前がつけられない。

嫌われたわけでもない。
距離を置かれたわけでもない。

ただ、
前と同じなのに、同じじゃない気がする
その曖昧さが、いちばん厄介でした。


聞けないまま、態度が変わっていく

ほんの少し、探るようになる

「忙しい?」
「疲れてる?」

以前より、
そんな言葉が増えていることに、
自分で気づいていました。

確かめたいわけじゃない。
責めたいわけでもない。

ただ、
安心できる材料が欲しいだけ。

でも、それを重ねるほど、
自分が“重くなっている気”がして、
また黙ってしまうのです。

甘えと遠慮が、同時に存在する

会えば、
笑っていたい。
楽しい時間にしたい。

でも、
本当は聞きたいことがある。

その矛盾が、
表情や言葉の端に、
少しずつ滲み出ていました。


期待してしまう自分が、怖い

「次はいつ会える?」が言えない

予定の話になると、
胸が少し緊張します。

自分から言い出して、
もし曖昧に流されたら。

その想像だけで、
一歩踏み出せなくなってしまう。

期待して、
裏切られるのが怖い。

だから、
聞けないまま、待つことを選んでしまうのです。

待つ時間が、心を消耗させる

待っている間、
何度もスマホを見てしまう。

通知が来れば、
一瞬で気持ちが浮き上がり、
来なければ、
静かに沈んでいく。

この上下の波に、
少しずつ疲れている自分がいました。


不安は、関係を壊す前触れ

何も起きていないのに、苦しい

大きな喧嘩もない。
決定的な出来事もない。

それなのに、
心は確実にすり減っていく。

この関係が、
もう“楽しいだけ”ではなくなっている。

その事実を、
認めたくなくて、
目を逸らしていました。

それでも、手放す選択肢はない

不安は増えているのに、
離れたいとは思えない。

むしろ、
失うことのほうが、
ずっと怖い。

その気持ちが、
また次の不安を生み出していく。

私は、
そんな循環の中に
静かに入り込んでいました。


次回予告

次回は、
「気持ちの重さが、少しずつズレていく瞬間」

同じ関係にいるはずなのに、
見ている景色が違い始める。

追う側と、
追われる側。

その差に気づいてしまった時、
この関係は、さらに苦しくなっていきます。

地獄は、
音を立てずに深くなっていきます。

続きはまた次回。

『この恋は甘い地獄』第12話 幸せの裏側に、影が差し始める

楽しかったはずの帰り道

同じ時間を過ごしたのに、少し違う感覚

旅行の帰り道、
並んで歩きながら、私は少しだけ黙っていました。

楽しかった。
確かに幸せだった。

でも、胸の奥に
小さな違和感のようなものが残っていた。

それは不安というほど強いものではなく、
ただ、
現実が戻ってくる音のような感覚でした。

別れ際の空気が、少しだけ変わった

駅で別れる前、
彼はいつも通り優しかったし、
特別そっけないわけでもない。

それでも、
「またね」の言葉が、
どこか軽く聞こえてしまった。

気にしすぎだと、
自分に言い聞かせながらも、
その一瞬が頭から離れませんでした。


日常に戻ると、余白がつらくなる

楽しかった分だけ、反動がくる

家に帰り、
いつもの日常に戻ると、
心が急に静かになります。

洗濯物を回して、
冷蔵庫を開けて、
スマホを置く。

さっきまで隣にいた人が、
もう、ここにはいない。

その落差が、
思っていた以上に大きかったのです。

連絡を待つ時間が、長く感じる

彼からのメッセージは、
ちゃんと来ます。

でも、
少し間が空くだけで、
胸がざわつく。

「忙しいだけ」
「何も変わっていない」

そう思おうとするほど、
自分が不安になっていることを
否定できなくなっていきました。


見えない線引きを、意識し始める

踏み込めない場所がある

彼の生活のすべてを、
私は知りません。

週末のあとの予定。
家に帰ったあとの時間。
誰と、どんな空気で過ごしているのか。

聞かない。
聞けない。

それが暗黙のルールだと、
わかっているからです。

「これ以上」を望んではいけない関係

楽しい時間が増えるほど、
欲が出てしまう。

もっと一緒にいたい。
もっと近くにいたい。

でも、
その先を望んだ瞬間、
この関係は壊れてしまう。

そう思うと、
感情を抑え込むしかありませんでした。


幸せと不安が、同時に存在する

満たされているのに、安心できない

彼と過ごした時間は、
確かに私を満たしていました。

それなのに、
心はどこか落ち着かない。

幸せと同時に、
失う怖さが
はっきりと形を持ち始めていたのです。

もう、軽い気持ちではいられない

最初の頃のように、
「楽しいから」
それだけでは済まなくなっていました。

この関係は、
もう私の感情に深く入り込んでいる。

そう気づいてしまった時、
少しだけ、息が詰まりました。


次回予告

次回は、
「言えない不安が、態度に出始める瞬間」

確かめたい。
でも、聞けない。
期待してしまう自分が、怖い。

幸せの裏側で、
静かに崩れ始めるバランス・・・

続きはまた次回。

『この恋は甘い地獄』第11話 二人だけの世界が現実を曖昧にする

彼も、私との時間を選んでくれる

期待に応えてくれているのか、それとも本心なのか

最近、彼は以前よりもはっきりと
「一緒に過ごす時間」を作ってくれるようになりました。

仕事の合間だけじゃなく、
週末に時間を空けてくれたり、
泊まりがけで出かける予定を立ててくれたり。

それが
期待に応えようとしてくれているのか、
それとも本当に一緒にいたいと思ってくれているのか。

考えても、答えはわからないけど。
少なくとも
選ばれている時間がある
その事実が、私を安心させていました。

予定を共有するだけで、心が浮き立つ

旅行の日程を決めて、
宿を探して、
どこに行くかを話す。

それだけのことなのに、
胸の奥が少し弾む。

まるで、
普通の恋人同士みたいだと感じてしまう自分がいました。


夫婦に見られることが、嬉しい

誰にも気づかれない、でも確かにそこにある幸福

旅先では、
誰も私たちの事情を知りません。

隣を歩けば、
自然に夫婦やカップルだと思われる。

お店で二人分の食事を頼み、
同じ部屋に泊まり、
同じ朝を迎える。

その空間の中では、
私たちは「いけない関係」ではありませんでした。

その視線が、心を満たしてしまう

誰かに
「奥さんですか?」
と聞かれるわけでもない。

でも、
そう見られている気がするだけで、
心が満たされていく。

それを嬉しいと感じてしまう自分を、
止めることができませんでした。


一緒にいる間だけ、世界が完結する

現実を忘れてしまうほどの安心感

彼と一緒にいる時間は、
驚くほど穏やかでした。

疑うことも、
不安になることも、
未来を考えることもない。

ただ、
今この瞬間だけが続けばいい。

そんなふうに思えてしまうほど、
心が静かに満たされていきます。

「幸せだ」と、はっきり思ってしまう

いけないことだと、
ちゃんとわかっています。

正しくない関係だとも、
理解しています。

それでも、
一緒にいる時間と空間は、
私にとって
世界で一番幸せだ
そう思えてしまうのです。


幸せが深いほど、戻れなくなる

この時間が、永遠じゃないことも知っている

週末が終われば、
それぞれの現実に戻る。

そのことも、
もちろんわかっています。

でも、
わかっていることと、
受け入れられることは、別でした。

幸せを知ってしまった代償

こんな時間を知ってしまったら、
もう、
何もなかった頃には戻れない。

幸せが深くなるほど、
失う怖さも増えていく。

それでも私は、
この関係を手放す勇気を
まだ、持てずにいました。


次回予告

次回は、
「幸せの裏で、静かに増えていく不安」

一緒に過ごせば過ごすほど、
見えなくなっていた現実が、
少しずつ顔を出し始めます――

続きはまた次回。

『この恋は甘い地獄』第10話 もう戻れない場所に立っていた

「家庭は壊さない」という言葉に、しがみつく

彼には、奥さんがいる

その事実は、最初から変わっていません。
わかっていて、始めた関係です。

だから、
「家庭を壊すつもりはない」
その言葉を、何度も心の中で繰り返していました。

それは理性というより、
自分を保つための言い訳だったのかもしれません。

奥さんは「女性」じゃないと思いたい

彼が話す奥さんの存在を、
いつの間にか、
**「妻」ではなく「家族」**として受け取るようになっていました。

もう恋愛感情はない。
女としては見ていない。
一緒に暮らしているだけ。

そう思えたほうが、
自分の立場が、少しだけ安全になるからです。


「愛されているのは私」だと思いたくなる

彼の優しさが、判断を鈍らせる

彼の言葉も、触れ方も、目線も、優しい。

その一つ一つが、
「選ばれているのは私だ」
そう思わせるには、十分すぎました。

比べるつもりなんてなかったのに、
いつの間にか、
自分のほうが“女性として愛されている”
そう信じたくなっていました。

奥さんとは、体では繋がっていないと信じたい

会えない夜、
ふと浮かぶ想像を、必死に打ち消します。

奥さんと、どんな距離なのか。
同じベッドで眠っているのか。
触れているのか。

考えたくない。
だから、
「もう、そういう関係じゃないはず」
と、自分に言い聞かせる。

真実かどうかより、
そうであってほしいという願いでした。


バレたら困る。でも、やめられない

現実的な恐怖は、ちゃんとある

軽率なことはできない。
痕跡は残さない。
誰にも気づかれないように。

その意識は、ちゃんとあります。

失うものがあることも、
壊してはいけないものがあることも、
理解しているつもりでした。

それでも、欲望は理性をすり抜ける

でも、
彼からの連絡を待つ時間。
会えない日の長さ。

その一つ一つが、
理性を少しずつ削っていきました。

「ダメだ」と思うほど、
「会いたい」が強くなる。

欲望は、
叫ばない。
暴れない。

ただ静かに、
確実に、
判断力を壊していくのです。


ハマっていると、わかってしまった瞬間

自分でも、止められないと気づく

これは恋なのか、
依存なのか、
それとも、ただの逃げ場なのか。

もう、はっきりとはわかりません。

ただ一つ、
確かなことがあります。

私はもう、
この関係に
深く、ハマってしまっている

地獄だとわかっていて、抜けられない

家庭は壊さない。
バレたら困る。
正しくない。

すべて、わかっています。

それでも、
彼に愛されていると思いたい自分を、
止めることができない。

ここが地獄の入り口だと、
はっきりわかっているのに。

もう、
戻れない場所に立っていました。


次回予告

次回は、
**「幸せが深くなるほど、不安も育っていく」**

一緒に過ごした時間が増えたことで、
見ないふりをしていた現実が、
少しずつ輪郭を持ちはじめます。

満たされているはずなのに、
なぜか安心できない。

この幸福が、
いつまで続くのかを考えてしまうーー

続きはまた次回。