『この恋は甘い地獄』第12話 幸せの裏側に、影が差し始める

楽しかったはずの帰り道

同じ時間を過ごしたのに、少し違う感覚

旅行の帰り道、
並んで歩きながら、私は少しだけ黙っていました。

楽しかった。
確かに幸せだった。

でも、胸の奥に
小さな違和感のようなものが残っていた。

それは不安というほど強いものではなく、
ただ、
現実が戻ってくる音のような感覚でした。

別れ際の空気が、少しだけ変わった

駅で別れる前、
彼はいつも通り優しかったし、
特別そっけないわけでもない。

それでも、
「またね」の言葉が、
どこか軽く聞こえてしまった。

気にしすぎだと、
自分に言い聞かせながらも、
その一瞬が頭から離れませんでした。


日常に戻ると、余白がつらくなる

楽しかった分だけ、反動がくる

家に帰り、
いつもの日常に戻ると、
心が急に静かになります。

洗濯物を回して、
冷蔵庫を開けて、
スマホを置く。

さっきまで隣にいた人が、
もう、ここにはいない。

その落差が、
思っていた以上に大きかったのです。

連絡を待つ時間が、長く感じる

彼からのメッセージは、
ちゃんと来ます。

でも、
少し間が空くだけで、
胸がざわつく。

「忙しいだけ」
「何も変わっていない」

そう思おうとするほど、
自分が不安になっていることを
否定できなくなっていきました。


見えない線引きを、意識し始める

踏み込めない場所がある

彼の生活のすべてを、
私は知りません。

週末のあとの予定。
家に帰ったあとの時間。
誰と、どんな空気で過ごしているのか。

聞かない。
聞けない。

それが暗黙のルールだと、
わかっているからです。

「これ以上」を望んではいけない関係

楽しい時間が増えるほど、
欲が出てしまう。

もっと一緒にいたい。
もっと近くにいたい。

でも、
その先を望んだ瞬間、
この関係は壊れてしまう。

そう思うと、
感情を抑え込むしかありませんでした。


幸せと不安が、同時に存在する

満たされているのに、安心できない

彼と過ごした時間は、
確かに私を満たしていました。

それなのに、
心はどこか落ち着かない。

幸せと同時に、
失う怖さが
はっきりと形を持ち始めていたのです。

もう、軽い気持ちではいられない

最初の頃のように、
「楽しいから」
それだけでは済まなくなっていました。

この関係は、
もう私の感情に深く入り込んでいる。

そう気づいてしまった時、
少しだけ、息が詰まりました。


次回予告

次回は、
「言えない不安が、態度に出始める瞬間」

確かめたい。
でも、聞けない。
期待してしまう自分が、怖い。

幸せの裏側で、
静かに崩れ始めるバランス・・・

続きはまた次回。

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