
約束の日が近づくにつれて
彼と「また会おう」と決めてから、その日までは案外あっという間でした。
家事をこなし、仕事をこなしているいつもの毎日の中に、
“彼と会う”という予定だけが、ぽつんと光るように存在していました。
浮かれているわけじゃないのに、
その日が近づくたびに、なんとなく胸のあたりがざわつく。
忘れたいのに、忘れたくない。
そんな変な気持ちがずっとありました。
待ち合わせ場所に向かう道
当日。
支度をして、少し早めに家を出ました。
特別おしゃれをしたわけではありません。
いつもより少しだけ丁寧なメイク、少しだけ落ち着いた服。
その「少しだけ」に、自分の気持ちが出ている気がして、
歩きながら苦笑い。
待ち合わせ場所に近づくにつれて、
鼓動が少しだけ早くなるのを感じました。
恋のドキドキというより、
「久しぶりの再会に緊張しているだけ」
と言い聞かせながら。
ふと目に入った“彼の姿”
待ち合わせの場所に着いて、
人混みの中に立っている彼を見つけた時。
「あ、いる。」
その瞬間の感覚は、思ったよりも淡々としていました。
もっと劇的な気持ちになるかと思っていたけど、
現実は案外静かで、ただ懐かしいだけ。
でも、不思議なことに—
少しだけ胸の奥が温かくなるのを感じたのも事実。
彼もこちらに気づいて、軽く手をあげてくれました。
その仕草が昔と変わっていなくて、
“あぁ、この人はあの頃の彼のままだ”
と、どこか安心するような感覚がありました。
ぎこちない近況報告と、自然に戻る空気
久しぶりに会ったからか、最初の数分は少しぎこちない空気でした。
天気の話、仕事の話、共通の友人の近況。
どれも特別な内容ではありません。
でも、10分も経たないうちに、
空気がゆっくりと昔の雰囲気に戻っていくのがわかりました。
学生時代の話になると、思わず笑ってしまうような懐かしさが込み上げてきて、彼も同じように肩の力が抜けていくのがわかりました。
“あぁ、この人と話すときはこんな感じだったな”
そんな記憶が自然に戻ってくる。
その感じが妙に心地よい。
特別じゃない時間が、特別に思える
食事をしながら話していると、
気づけば時間があっという間に過ぎていました。
特にドキッとするようなことを言われたわけでもないし、
手を触れられたわけでもありません。
本当にただの“再会した同級生”との時間。
なのに…
帰り道、ひとりで歩きながら、
静かに胸の奥が熱いような、ざわざわするような、
言葉にしづらい感覚がありました。
「また会いたい」
そう思った瞬間、自分で少し驚きました。
理由なんてまだよくわからない。
でも、今日の時間が悪くなかったから。
それだけで充分でした。
再会してみて感じたこと
会う前はあれこれ考えてしまっていたけれど、
実際に会ってみたら、特別なドラマなんて何も起きませんでした。
けれど、
“何も起きなかったからこそ、また会いたくなる”
そんな不思議な気持ちを、
久しぶりに味わったのです。
次回予告:第5話
次回は、
“再会後、連絡が当たり前になっていく”
あの静かな変化について書いていきます。
曖昧なのに心地よくて、
気づかないうちに距離が縮まってしまう、、、
続きはまた次回。