
ただのカフェのはずだった
昼間の、ありふれた時間。
コーヒーを飲んで、少し話して、
それで終わるはずだった。
なのに——
帰り道、ずっと彼のことを考えていた。
残る余韻
楽しかった。
それだけのはずなのに、
胸の奥に、妙な余韻が残っている。
特別なことは何もしていない。
触れてもいない。
ただ話しただけ。
それなのに。
「また会いたい」
その言葉が、頭から離れない。
日常とのズレ
家に帰ると、いつもの日常があった。
「おかえり」もなく、
夫はテレビを見ている。
子供たちは、それぞれの時間。
私はキッチンに立って、
夕飯の準備をする。
包丁の音。
換気扇の音。
いつもの生活音。
なのに、どこか遠く感じる。
スマホを待つ自分
スマホが気になる。
まだ何も来ていないのに、
何度も画面を開いてしまう。
こんなこと、今までなかった。
夫からの連絡は、気付かなくても平気なのに。
たった一度会っただけの人からの通知を、
こんなにも待っている。
たった一言
「今日はありがとう」
やっと届いた一言。
それだけなのに、
心臓が少し跳ねた。
「こちらこそ、楽しかったです」
そう返しながら、少しだけ迷う。
“楽しかった”なんて、軽い言葉でいいのか。
終わらない会話
やり取りは、すぐ終わると思っていた。
でも終わらなかった。
他愛のない会話が続く。
今日の話。
仕事のこと。
どうでもいい冗談。
気付けば、笑っていた。
スマホを見ながら、ひとりで。
久しぶりの感覚
こんな時間、いつぶりだろう。
誰かとの会話が、
こんなにも楽しいなんて。
誰かに「わかる」と言われることが、
こんなにも安心するなんて。
思考の変化
ふと、思う。
次は、いつ会えるんだろう。
止まらない
寝る前、スマホを置けなかった。
やり取りはもう終わっているのに、
また開いてしまう。
最後のメッセージを、何度も見返す。
「また会えたら嬉しいです」
その一文が、やけに残る。
もう始まっている
ただの一言なのに。
ただの社交辞令かもしれないのに。
それでも。
「私も会いたい」
そう思ってしまった。
小さな崩れ
これは、まだ恋じゃない。
ただ、少し楽しかっただけ。
少し、満たされただけ。
そう言い聞かせながら——
私はもう、次に会うことを考えている。
帰ってきたはずなのに。
ちゃんと日常に戻ったはずなのに。
どうして私は、
あの時間に戻りたいと思っているんだろう。
これは、ただの気の迷いですか。
それとも——
もう、始まってしまっているんですか。
続きはまた次回。