2026年 4月 の投稿一覧

『この恋は甘い地獄』最終話 地獄だと知りながら、それでも

何も終わっていない日常

あれから、特別な出来事は何もない。

彼と別れてもいないし、
劇的に関係が変わったわけでもない。

ただ、
私の中だけが少し変わった。

気づいてしまったから。


彼からの通知

画面に表示された名前

夜、スマホが震える。

彼の名前。

一瞬で胸が跳ねる。
体は正直だ。

嬉しい。
やっぱり、嬉しい。

「会いたい」

その短い言葉だけで、
一日分の寂しさが報われた気がする。


でも、前とは違う

前なら、
何も考えずに舞い上がっていた。

奥さんの存在も、
未来のなさも、
自分の矛盾も、

全部、見ないふりができた。

でも今は違う。

私は知っている。

この関係が
誰の一番にもならないことを。


嬉しさと、静かな理解

幸せは本物。でも永遠じゃない

彼と過ごす時間は、
やっぱり温かい。

触れられると安心する。
名前を呼ばれると満たされる。

それは嘘じゃない。

でも同時に、

この時間が
“借り物の幸福”だということも
私は分かっている。


依存を自覚しても、消えない想い

私は彼を愛している。

でもそれだけじゃない。

彼に選ばれている自分を、
必要とされている自分を、
失いたくない。

その構造を、
もう理解してしまった。

理解しても、
気持ちは消えない。

それがいちばん厄介だ。


目を開けたまま、ここにいる

盲目ではなくなった

彼の優しさに酔いきることはない。

奥さんの存在を
なかったことにはしない。

未来を期待して
勝手に傷つくことも減った。

私は、
ちゃんと分かっている。


それでも、まだ

彼からの「会いたい」に
心が動く。

嬉しいと感じる。

この矛盾ごと、
いまの私なんだと思う。

正しくない。
綺麗でもない。

でも、嘘でもない。


選ばないという選択

私はまだ、離れない。

でも、盲目でもいない。

期待しすぎない。
自分を削りすぎない。

少しずつ、
自分の重心を戻しながら。

完全に目覚めたわけじゃない。

でも、もう眠ってもいない。


最後に

地獄だと知りながら、私はまだここにいる。

『この恋は甘い地獄』第19話 目を逸らさなくなった夜

何も壊れていない関係

あの帰り道のあとも、
彼との関係は続いている。

連絡は来るし、
会えば優しい。

終わる理由は、どこにもない。

だから私は、
今日も彼と会っている。


優しさの中で考えてしまう

触れられながら、冷静な自分がいる

腕の中にいるのに、
心のどこかが静かだった。

前なら、
「幸せ」としか思えなかった瞬間。

今は違う。

この時間が、
日常ではないことを知っている。

帰る場所が別にあることを、
知っている。


私は何を信じてきたのか

奥さんとはもう男女じゃない。

そう思い込んでいた。

そうであってほしかった。

女性として愛されているのは私。
求められているのは私。

でもそれは、
確かめたことのない希望だった。

希望というより、
自分を保つための物語。


「特別」でいたいだけだったのかもしれない

勝ち負けのないはずの関係で

家庭は壊したくない。

でも、負けたくない。

奥さんより深く繋がっていたい。
心では私を選んでいてほしい。

その願いは、
愛というより執着に近い。

私は彼を求めながら、
同時に“優越”も求めていた。


彼は変わらない

変わったのは私だけ

彼は今まで通り。

優しくて、
必要としてくれて、
でも未来は約束しない。

変わったのは私だ。

私はもう、
この構造を理解してしまった。


それでも、嫌いにはなれない

知ったからといって、
気持ちが消えるわけじゃない。

会えば安心する。

声を聞けば、嬉しい。

連絡が途切れれば、
やっぱり少し不安になる。

理性と感情は、
まだ噛み合わないまま。


目を開けたまま続く関係

盲目ではなくなった

彼の言葉を、
全部そのまま信じることはしない。

未来を勝手に期待して、
勝手に傷つくことも減った。

私はようやく、
自分の依存を認めた。


でも、まだここにいる

理解したからといって、
離れられるほど強くはない。

矛盾も、弱さも、欲も、
全部そのまま抱えている。

それでも、
前とは少し違う。

私はもう、
自分に嘘をついていない。


次回予告(最終話)

彼からの連絡に、
胸はやっぱり跳ねる。

でも前みたいに、
何も知らない顔では喜べない。

分かってしまった自分と、
それでも揺れる心。

続きはまた次回。