2026年 6月 の投稿一覧

『婚外恋愛』 第9話 どちらが本当の自分

いつもの時間

朝、子供たちを送り出して、
いつものように家のことを終わらせる。

時計を見る。

まだ時間があるのに、
もう外に出る準備をしている。

考えるまでもなく、
体が先に動いていた。


向かう先

数駅離れた場所。

彼の車に乗り込むと、
それだけで気持ちが軽くなる。

何も変わらないはずの一日なのに、
ここから先は、まったく別の時間になる。


自分でいられる場所

部屋に入ると、自然に力が抜ける。

何も背負わなくていい。

母でもなく、
妻でもなく。

ただ、自分でいられる。

そんな感覚が、当たり前になっていた。


作らなくていい時間

家では、いつも何かを気にしている。

子供のこと。
夫のこと。
やるべきこと。

でもここでは、違う。

何も考えなくていい。

ちゃんとしなくてもいい。

それでも、受け入れられている。


比べてしまう

ふと、思う。

どっちが本当なんだろう。

家にいる自分と、
ここにいる自分。

どちらも嘘じゃないはずなのに、
重さが違う。


軽くなっていく

ここにいると、
心が軽くなる。

笑うことも、話すことも、
無理をしていない。

自然にできる。

その感覚が、少しずつ広がっていく。


戻る時間

帰る時間になると、
少しだけ現実に引き戻される。

車を降りて、
駅に向かって歩く。

さっきまでの空気が、遠くなる。


家に帰って

玄関のドアを開ける。

いつもの景色。
いつもの空気。

何も変わっていないはずなのに、
少しだけ違和感がある。


ズレ

ここが“帰る場所”のはずなのに。

なぜか、しっくりこない。

さっきまでいた場所の方が、
自分に近かった気がする。


気付いてしまった。

私は——

あの時間の方が、好きだ。


それは、ただ楽なだけなのか。

それとも——
本当の自分に近いだけなのか。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』 第8話 「またね」が軽くなる

終わりのはずなのに

最初の頃は、帰る時間が近づくと、少しだけ寂しかった。

「もう帰るね」

その一言が、どこか重かった。

でも——

今は、少し違う。


当たり前の約束

「またね」

自然に出るようになった言葉。

深い意味なんて込めていないのに、
その一言だけで、次が決まる。

いつ会うかも、
細かく決めなくなった。

それでも、不安はなかった。


終わりじゃない

別れる瞬間が、終わりじゃなくなっている。

ドアを出ても、
車に乗っても、
家に帰っても。

やり取りは続く。

会話も、気持ちも、途切れない。


距離の変化

離れている時間が、前より軽くなった。

寂しさが消えたわけじゃない。

でも、それよりも——
「またすぐ会える」が勝つ。


感覚のズレ

普通なら、ここで不安になるはずなのに。

なぜか、ならない。

むしろ、安心している。

この関係は続く。

どこかで、そう思っている。


ふたりのリズム

連絡のタイミングも、会う流れも、
すべてが自然に回っている。

無理をしていないのに、途切れない。

気付けば、彼とのやり取りが、
生活のリズムになっていた。


深くなっているのに

関係は、確実に深くなっている。

一緒にいる時間も、増えている。

それなのに——

「重い」と感じる瞬間がない。

むしろ、軽い。


軽さの正体

「またね」

その言葉の軽さに、
少しだけ違和感を覚えた。

前は、もっと意味を持っていたはずなのに。


気付かないふり

でも、その違和感を深く考えなかった。

考えたところで、何も変わらない。

それよりも、
次に会うことの方が大事だった。


「またね」

そう言って別れることに、慣れていく。

終わりじゃない関係に、
安心している自分がいる。


それは、余裕なのか。

それとも——
もう抜け出せなくなっているだけなのか。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第7話 何もかも、合いすぎている

似ている感覚

最初に思ったのは、たぶん「楽」だった。

無理をしなくていい。
気を遣いすぎなくていい。

言葉を選ばなくても、
ちゃんと伝わる。

そんな感覚が、自然にあった。


タイミング

話すタイミングも、笑うタイミングも、
不思議なくらい同じだった。

どちらかが何か言おうとすると、
同じことを考えている。

そんな瞬間が、何度も重なる。

偶然にしては、多すぎると思った。


沈黙が苦しくない

何も話していない時間も、
嫌じゃなかった。

むしろ、落ち着く。

隣にいるだけでいいと思える関係なんて、
初めてかもしれない。


比べてしまう

こんなふうに自然でいられる相手が、
他にいたことがあっただろうか。

ふと、考えてしまう。

夫といた時間。
これまでの関係。

どれとも違う。


体温

近くにいると、安心する。

触れていると、落ち着く。

その感覚が、言葉よりも確かだった。

説明できないのに、分かってしまう。


確信に近いもの

「合うね」

彼が、何気なく言った。

軽い言い方だったのに、
その一言がやけに残る。

私も、同じことを思っていたから。


特別じゃないのに

何か特別なことをしているわけじゃない。

派手なデートでもないし、
特別な場所でもない。

それなのに——

ここにいる時間が、
一番しっくりくる。


ふたりの感覚

無理をしていない。
背伸びもしていない。

ただ、そのままでいられる。

それが、こんなにも心地いいなんて思わなかった。


名前をつけたくなる

これは、何なんだろう。

ただの関係、ではない気がする。

でも、言葉にしてしまうと、
壊れてしまいそうで。

はっきりさせるのが、少し怖い。


それでも

考えなくても分かる。

私は、この人に惹かれている。

そして——
たぶん、彼も同じだ。


この関係に、名前をつけるなら。

それは、間違いなんだろうか。

それとも——
やっと出会えたものなんだろうか。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第6話 気づけば、そこが私達の居場所

朝の待ち合わせ

朝、子供たちを送り出したあと。

いつも通りに家のことを済ませて、
何も変わらない顔で外に出る。

数駅離れた場所。

誰にも会わないように選んだ駅で、
彼の車を待つ。

少しして、見慣れた車が止まる。

何も言わずにドアを開けて、
当たり前のように助手席に乗り込む。

「おはよう」

その一言で、もう空気が変わる。


いつもの流れ

途中のコンビニに寄るのも、
いつの間にか決まった流れになっていた。

コーヒーと、軽く何かを買って。

どっちが払うかも、なんとなくで決まる。

特別なことは何もない。

ただ、自然に隣にいる。

それだけで、満たされている。


迷いのない足取り

車が止まる場所も、もう迷わない。

初めてのときにあった戸惑いは、
どこにも残っていなかった。

当たり前のように降りて、
当たり前のように中へ入る。

隣に彼がいる。

それだけで、何も考えなくていい。


変わってしまった感覚

最初は、少しだけ特別な場所だったはずなのに。

今はもう、違う。

ここに来ると落ち着く。

ここに来ると、戻れる。

そんな感覚に変わっていた。


ふたりでいる時間

部屋に入ると、空気が緩む。

外ではできない距離で、
何も気にせず隣にいられる。

言葉は多くなくてもいい。

視線と、空気と、距離で分かる。

ここにいる時間だけが、
ちゃんと繋がっている気がした。


合いすぎている

不思議なくらい、合っていると思った。

無理をしていないのに、心地いい。

沈黙も自然で、
どこにも違和感がない。

こんな関係、知らなかった。


日常になっていく

週に何度も繰り返すうちに、
この時間が“特別”じゃなくなっていく。

むしろ、ここに来ない日の方が落ち着かない。

会うことが前提の生活。

そんなふうに変わっていった。


境界が曖昧になる

家にいる時間と、
彼といる時間。

どちらも同じ一日なのに、
重さが違う。

どっちが現実なのか、
分からなくなる瞬間があった。


ふたりの居場所

ここでは、何も背負わなくていい。

母でもなく、妻でもない。

ただ、自分でいられる。

ただ、彼といられる。


気付けば——

この場所が、
一番落ち着く場所になっていた

続きはまた次回。