2026年 8月 の投稿一覧

『婚外恋愛』第14話 家にいるのに、帰りたい

いつもの夜

「ただいま」

そう言って家に入る。

子供たちの声がして、
夕飯の準備をして、
いつもの夜が始まる。

何も変わらない。

変わっていないはずなのに——

どこか、遠い。


隣にいる人

夫はいつも通りだった。

今日あったことを話して、
テレビを見て、
当たり前みたいに同じ空間にいる。

前は、それが普通だった。


比べたくないのに

比べたくない。

そんなこと、してはいけないと思う。

でも、気付けば比べている。

空気。
会話。
沈黙。

全部。


軽くなってしまったもの

前は、ちゃんとここにいたはずなのに。

家族の時間を大切にして、
妻として過ごしていたはずなのに。

今はどこか、感覚が薄い。

ちゃんと笑っている。
ちゃんと返事もしている。

でも、心だけが少し離れている。


思い出してしまう

彼といる時間を思い出す。

車の中の空気。
何気ない会話。
隣にいる時の安心感。

思い出した瞬間、
今ここにいる自分との温度差に気付いてしまう。


触れられたくない

夫に悪気はない。

それは分かっている。

でも、近付かれると少しだけ身構える。

触れられそうになると、
反射的に距離を取ってしまう自分がいた。


帰る場所

ここが、帰る場所のはずなのに。

ちゃんと守ってきた場所のはずなのに。

なのに——

最近、落ち着く場所を思い浮かべると、
最初に浮かぶのは彼の隣だった。


気付いてはいけないこと

気付いたら終わる気がして、
ずっと考えないようにしていた。

でも、もう誤魔化せない。


変わってしまった

私はたぶん、もう戻れない。

ただ刺激に溺れているだけだと思っていた。

でも違った。


彼といる時間が、特別なんじゃない。

今の私にとって——

あっちの方が、“自然”になってしまった。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第13話 言葉にしない約束

「好き」を言わない理由

不思議なくらい、ちゃんと伝わっていた。

わざわざ確認しなくても。
言葉にしなくても。

彼が会いたがっていることも、
私を求めていることも。

全部、分かってしまう。


軽くしたくなかった

「好き」

その言葉を使ってしまうと、
急に安っぽくなる気がしていた。

簡単に口にした瞬間、
この関係の温度が変わってしまいそうで。

だから、お互い言わなかった。


でも、伝わる

会えば分かる。

視線の向け方。
触れるタイミング。
離れる時の空気。

言葉なんかなくても、
十分すぎるくらい伝わっている。


優先してしまう

「今週、どこかで会える?」

その一言で、予定を調整する。

子供の予定。
家のこと。
夫の帰宅時間。

全部を見ながら、
彼との時間を先に確保している自分がいる。


彼も同じ

彼も、仕事の予定を動かしていた。

「午後なら空けられる」

「その日は時間作れる」

そんなふうに、自然に合わせてくる。

無理している感じがないのが、余計に怖い。


言葉より確かなもの

“会う”という行動そのものが、答えになっていた。

忙しい中で時間を作ること。

会えない週があるだけで寂しくなること。

また会った瞬間、安心すること。

それ全部が、
もう十分すぎるほど気持ちを表している。


未来の話はしない

お互い、未来の話はしなかった。

離婚するとか。
一緒になるとか。

そういう現実的な話は、一度も出ていない。


それでも

不安がないわけじゃない。

でも、今のこの関係を壊したくなかった。

変に名前をつけて、
重くしたくなかった。


暗黙のルール

深く聞きすぎない。
無理に確かめない。

でも、ちゃんと会う。

そのバランスが、
不思議なくらい心地よかった。


約束なんてないのに

「ずっと一緒にいよう」

そんな約束はしていない。

好きとも言っていない。

なのに——

次も会うことを、疑っていない。


言葉にしていないだけで。

私たちはもう、
十分すぎるほど繋がっていた。

続きはまた次回。