
何も壊れていない関係
あの帰り道のあとも、
彼との関係は続いている。
連絡は来るし、
会えば優しい。
終わる理由は、どこにもない。
だから私は、
今日も彼と会っている。
優しさの中で考えてしまう
触れられながら、冷静な自分がいる
腕の中にいるのに、
心のどこかが静かだった。
前なら、
「幸せ」としか思えなかった瞬間。
今は違う。
この時間が、
日常ではないことを知っている。
帰る場所が別にあることを、
知っている。
私は何を信じてきたのか
奥さんとはもう男女じゃない。
そう思い込んでいた。
そうであってほしかった。
女性として愛されているのは私。
求められているのは私。
でもそれは、
確かめたことのない希望だった。
希望というより、
自分を保つための物語。
「特別」でいたいだけだったのかもしれない
勝ち負けのないはずの関係で
家庭は壊したくない。
でも、負けたくない。
奥さんより深く繋がっていたい。
心では私を選んでいてほしい。
その願いは、
愛というより執着に近い。
私は彼を求めながら、
同時に“優越”も求めていた。
彼は変わらない
変わったのは私だけ
彼は今まで通り。
優しくて、
必要としてくれて、
でも未来は約束しない。
変わったのは私だ。
私はもう、
この構造を理解してしまった。
それでも、嫌いにはなれない
知ったからといって、
気持ちが消えるわけじゃない。
会えば安心する。
声を聞けば、嬉しい。
連絡が途切れれば、
やっぱり少し不安になる。
理性と感情は、
まだ噛み合わないまま。
目を開けたまま続く関係
盲目ではなくなった
彼の言葉を、
全部そのまま信じることはしない。
未来を勝手に期待して、
勝手に傷つくことも減った。
私はようやく、
自分の依存を認めた。
でも、まだここにいる
理解したからといって、
離れられるほど強くはない。
矛盾も、弱さも、欲も、
全部そのまま抱えている。
それでも、
前とは少し違う。
私はもう、
自分に嘘をついていない。
次回予告(最終話)
彼からの連絡に、
胸はやっぱり跳ねる。
でも前みたいに、
何も知らない顔では喜べない。
分かってしまった自分と、
それでも揺れる心。
続きはまた次回。