『婚外恋愛』第3話 一線を超えた夜

約束してしまった日

「今度、夜に会える?」

彼からのその一言に、少しだけ間が空いた。

昼間なら、言い訳ができる。
ただの食事、ただの会話。

でも、夜は違う。

意味を持ってしまう時間。

それでも——

「うん、大丈夫」

そう返していた。


分かっていたはずなのに

約束したあと、少しだけ考えた。

これは、よくないこと。
ちゃんと分かっている。

私は結婚していて、子供もいる。
彼も同じ。

壊してはいけないものが、
お互いにある。

それでも。

やめようとは思わなかった。


夜という時間

待ち合わせの場所に向かう足が、少し速くなる。

緊張しているはずなのに、
どこか楽しみにしている自分がいる。

彼の顔を見た瞬間、
その感情ははっきりした。

嬉しい。

ただ、それだけだった。


近づく距離

食事をして、少しお酒を飲んで。

会話は、昼間と変わらないのに、
空気だけが違う。

視線が合う時間が、少し長い。
沈黙が、嫌じゃない。

ふとした瞬間、距離が近い。

触れそうで、触れない。


触れた瞬間

帰ろうとしたとき、
彼に呼び止められた。

その一歩が、近い。

手が触れる。

たったそれだけで、
思考が止まる。

あたたかい、と思った。


理性が追いつかない

ダメだと、頭では分かっている。

でも、体は動かなかった。

離れなきゃいけないのに、
離れたくなかった。

彼の手を、振りほどけなかった。


越えてしまった境界線

気付いたときには、もう遅かった。

戻れない場所にいると、
ちゃんと分かっていた。

それでも——

嫌じゃなかった。

むしろ、安心していた。

やっと触れられた、と思った。


幸せだった

こんなに満たされること、
まだ自分に残っていたんだと思った。

誰かに必要とされる感覚。

求められること。
求めること。

忘れていたものが、
一気に戻ってきた。


罪悪感の前に

帰り道、ひとりになっても、
不思議と後悔はなかった。

いけないことをしたはずなのに。

それよりも先に残っていたのは、
さっきまでの温度だった。


もう戻れない

スマホを見ると、彼からのメッセージ。

「今日はありがとう」

また、その一言。

でも、さっきまでとは意味が違う。

私は少しだけ考えて、
こう返した。

「また会いたい」


一度越えてしまったら、
もう戻れないことくらい分かっている。

それでも。

次を求めている自分がいる。


これは、間違いですか。

それとも——
やっと手に入れたものですか。

続きはまた次回。

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