2026年 9月 の投稿一覧

婚外恋愛〜男の本音〜

第1話 もう男として終わったと思っていた

不満があるわけじゃない

家庭に不満があったわけじゃない。

妻とは長い付き合いだし、子供たちも大切だ。

仕事も順調だった。

世間から見れば、たぶん恵まれている方だと思う。


それでも

ふと感じることがあった。

最近、自分は何のために生きているんだろう、と。

朝起きて仕事へ行く。

家に帰る。

家族と食事をする。

また朝が来る。

それを繰り返す。


消えていたもの

父親としての役割。

夫としての役割。

それはちゃんと果たしている。

でも——

男としての自分は、どこへ行ったんだろう。

そんなことを考える日が増えていた。


軽い気持ち

マッチングアプリを入れたのは、そんな頃だった。

深い理由なんてない。

恋愛がしたかったわけでもない。

離婚したかったわけでもない。

ただ、誰かと話したかった。

それだけだった。


彼女

何人かとやり取りをした。

でも続かない。

途中で面倒になる。

そんな繰り返しだった。


なぜか続いた

彼女との会話だけは違った。

特別な話をしていたわけじゃない。

今日あったこと。

仕事のこと。

子供のこと。

本当に普通の会話。


居心地の良さ

なのに、不思議だった。

返事が来ると少し嬉しい。

気付けば返信している。

無理をしていないのに会話が続く。


会ってみたい

写真を見ても、正直よく分からなかった。

タイプかと言われれば違う気もする。

でも——

一度会ってみたいと思った。

見た目じゃなくて。

話してみたいと思った。


初めて会う日

待ち合わせはカフェだった。

正直、少しだけ緊張していた。

この歳になって、初対面の女性に緊張するなんて思わなかった。


向かい側

彼女は先に来ていた。

写真で見た時より、柔らかい印象だった。

席に座る。

挨拶をする。

少し笑う。


気付けば

あっという間だった。

時間が過ぎるのが早かった。

会話が途切れない。

変に気を遣わなくていい。


久しぶりの感覚

帰り道。

ひとりで車を運転しながら思った。

楽しかったな。


ただ、それだけだった。

少なくとも、この時は。

まさか——

この人が、自分の日常を変える存在になるなんて。

まだ想像もしていなかった。

『婚外恋愛』最終話 婚外恋愛の結末

最後の待ち合わせ

待ち合わせの駅に向かう途中。

何度も引き返したくなった。

今日で終わる。

ちゃんと、分かっている。


変わらない景色

彼の車に乗る。

いつもと同じ匂い。
いつもと同じ声。

少し前まで、
この場所が一番落ち着いていた。


何も言えない

車の中で、あまり会話はなかった。

何を話しても、
最後に繋がってしまいそうで。

沈黙ばかりが増えていく。


ふたりだけの場所

部屋に入る。

何度も来た場所。

笑った日も、
離れたくなかった日も。

全部、ここに置いてきた。


終わる関係

「ごめん」

彼が言う。

その言葉だけで十分だった。

責められない。

責めたところで、
何も変わらない。


分かっていた

最初から、分かっていた。

ずっと続く関係じゃないこと。

現実には勝てないこと。

家庭があって、
子供がいて。

守るものがあること。


それでも本気だった

でも——

嘘じゃなかった。

少なくとも私は、本気だった。

会いたくて。
触れたくて。
失いたくなくて。

毎日の中で、
確かに彼を愛していた。


甘い時間

あの時間は、逃げだったんだろうか。

寂しさを埋めるための関係だったんだろうか。

たぶん、それだけじゃない。


ちゃんと幸せだった

一緒にいる時、幸せだった。

笑って、安心して、
満たされていた。

だから苦しい。

幸せだった記憶ほど、
あとから人を苦しめる。


元には戻れない

この恋が終わったからって、
何もなかった頃の自分には戻れない。

彼を知る前みたいに、
普通の毎日だけを生きることは、もうできない。


残ったもの

残ったのは、
少しの後悔と。

忘れられない温度だった。


婚外恋愛

きっと、正しい恋ではなかった。

誰かに胸を張れる関係でもない。

でも——

人生の中で、
確かに存在した恋だった。


逃げだったのか。

純愛だったのか。

今でも、よく分からない。


ただひとつ言えるのは。

あの時の私は、
確かに彼を愛していた。

『婚外恋愛』第19話 選ばなければいけない日

会えない時間

会えなくなって、三週間が過ぎていた。

連絡は続いている。

「おはよう」
「今日も忙しい」
「やっと落ち着きそう」

言葉はある。

でも——

前とは、違う。


埋まらない距離

やり取りをしていても、満たされない。

画面越しの言葉だけでは、
もう足りなくなっていた。

会っていた頃の感覚を、
体が覚えてしまっている。


久しぶりの約束

「少しだけなら会える」

そのメッセージを見た瞬間、
胸が苦しくなるくらい嬉しかった。

やっと会える。

そう思っただけで、
止まっていた時間が動き出す。


再会

久しぶりに乗った彼の車。

隣にいるだけで安心するのに、
同時に少しだけ緊張していた。

会えなかった時間が、
前とは違う空気を作っている。


足りなかった言葉

「ごめんね」

彼が、小さく言った。

その言葉だけで、
張っていたものが崩れそうになる。


本音

「このまま終わるのかと思った」

気付いたら、口にしていた。

言うつもりなんてなかった。

重くなりたくなかった。

でも、怖かった。

本当に。


初めて見る顔

彼は少し黙ってから、
静かに言った。

「俺も怖かった」

その顔は、
今まで見たことがないくらい苦しそうだった。


現実

「でも、家庭を壊すつもりはない」

その言葉で、空気が止まる。

分かっていた。

最初から分かっていたこと。


分かっていたはずなのに

苦しかった。

彼が悪いわけじゃない。

むしろ、正しい。

子供がいて、家庭があって。

守るものがある。

当然のこと。


それでも

じゃあ、私たちは何なんだろう。

ここまで気持ちが深くなって。

こんなに求め合って。

それでも、“選ばれない側”なんだろうか。


選ばなければいけない日

ずっと曖昧なままでいられると思っていた。

でも、本当は違った。

いつか必ず、現実は来る。


家庭か。

それとも、この恋か。


選ばなければいけない日が、
少しずつ近付いていた。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第18話 崩れるきっかけ

その日は、突然だった

「ごめん、しばらく会うの難しいかも」

送られてきたメッセージを、何度も読み返した。

短い文章。

でも、その一文だけで、
呼吸が浅くなる。


理由

子供のことで、家の空気が少し怪しい。

最近、帰りが遅いって言われた。

しばらくは慎重にしたい。

そう書かれていた。


現実

初めてだった。

“家庭”という現実が、
はっきりこの関係に入り込んできたのは。


分かっていたはずなのに

そんな日が来ることくらい、分かっていた。

お互い家庭がある。

子供もいる。

ずっと同じようには続けられない。

そんなこと、最初から分かっていたはずなのに。


思った以上に

頭では理解できる。

でも、感情が追いつかない。

「そっか」

そう返すだけで精一杯だった。


怖かった言葉

“しばらく”

その言葉が、やけに怖かった。

一週間なのか。
一ヶ月なのか。

それとも——

もっと長いのか。


空いた場所

会えなくなっただけで、
生活の感覚が変わる。

時間が余る。

でも、その余った時間を、うまく使えない。


家にいるのに

子供と話していても、
夕飯を作っていても。

頭のどこかで、彼のことを考えている。

今、何してるんだろう。

同じように苦しいんだろうか。


温度差

ふと、不安になる。

私だけだったらどうしよう。

私だけが、こんなに苦しくて。

彼はちゃんと家庭に戻れていたら。


崩れ始める

会えていた時には見えなかったものが、
少しずつ見え始める。

この関係の不安定さ。

保証なんて、どこにもないこと。


それでも

終わりだとは思いたくなかった。

思った瞬間、
本当に終わってしまいそうで。


だから私は、
何も聞けなかった。

「待ってる」

その一言さえ、
重くなりそうで言えなかった。

続きはまた次回。