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『婚外恋愛』第15話 このままでいい

未来なんて考えていなかった

最初は、本当に軽い気持ちだった。

少し刺激がほしかっただけ。
日常から逃げたかっただけ。

こんなふうになるなんて、思っていなかった。


気付けば

気付けば、生活の中に彼がいる。

週に一度か二度、会う時間。

その予定があるだけで、
一週間の感じ方が変わる。

会える週は、少し頑張れる。

会えない週は、どこか物足りない。


先のことは分からない

この関係に未来があるのかなんて、分からない。

たぶん、普通に考えたらない。

お互い家庭があって、
子供もいる。

現実的じゃないことくらい、ちゃんと分かっている。


それでも

それでも——

今、失いたくないと思う。

終わることを想像した瞬間、
胸の奥が少し苦しくなる。


欲しくなっていく

最初は、“会えればいい”だけだった。

でも今は違う。

もう少し一緒にいたい。
もう少し知りたい。

少しずつ、欲張りになっていく。


当たり前の存在

彼から連絡が来る。

それだけで安心する。

「おはよう」
「今向かってる」

そんな何気ない言葉が、
いつの間にか日常に入り込んでいる。


壊したくない

重くなりたくない。

面倒な女にもなりたくない。

だから、未来の話はしない。

でも本当は、少しだけ聞いてみたくなる。

この先も、ちゃんと会えるのか。

私たちは、どうなるのか。


口にしないまま

聞かない。
確かめない。

その方が、この関係は続く気がしているから。


今だけでいいはずなのに

“今だけ”で始まったはずだった。

なのに——

気付けば、“このまま”を望んでいる。


終わりが来ることを、考えたくない。

考えた瞬間、
全部が壊れてしまいそうで。


だから今日も、何も聞かない。

ただ彼の隣で、
この時間が続くことだけを願っている。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第14話 家にいるのに、帰りたい

いつもの夜

「ただいま」

そう言って家に入る。

子供たちの声がして、
夕飯の準備をして、
いつもの夜が始まる。

何も変わらない。

変わっていないはずなのに——

どこか、遠い。


隣にいる人

夫はいつも通りだった。

今日あったことを話して、
テレビを見て、
当たり前みたいに同じ空間にいる。

前は、それが普通だった。


比べたくないのに

比べたくない。

そんなこと、してはいけないと思う。

でも、気付けば比べている。

空気。
会話。
沈黙。

全部。


軽くなってしまったもの

前は、ちゃんとここにいたはずなのに。

家族の時間を大切にして、
妻として過ごしていたはずなのに。

今はどこか、感覚が薄い。

ちゃんと笑っている。
ちゃんと返事もしている。

でも、心だけが少し離れている。


思い出してしまう

彼といる時間を思い出す。

車の中の空気。
何気ない会話。
隣にいる時の安心感。

思い出した瞬間、
今ここにいる自分との温度差に気付いてしまう。


触れられたくない

夫に悪気はない。

それは分かっている。

でも、近付かれると少しだけ身構える。

触れられそうになると、
反射的に距離を取ってしまう自分がいた。


帰る場所

ここが、帰る場所のはずなのに。

ちゃんと守ってきた場所のはずなのに。

なのに——

最近、落ち着く場所を思い浮かべると、
最初に浮かぶのは彼の隣だった。


気付いてはいけないこと

気付いたら終わる気がして、
ずっと考えないようにしていた。

でも、もう誤魔化せない。


変わってしまった

私はたぶん、もう戻れない。

ただ刺激に溺れているだけだと思っていた。

でも違った。


彼といる時間が、特別なんじゃない。

今の私にとって——

あっちの方が、“自然”になってしまった。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第13話 言葉にしない約束

「好き」を言わない理由

不思議なくらい、ちゃんと伝わっていた。

わざわざ確認しなくても。
言葉にしなくても。

彼が会いたがっていることも、
私を求めていることも。

全部、分かってしまう。


軽くしたくなかった

「好き」

その言葉を使ってしまうと、
急に安っぽくなる気がしていた。

簡単に口にした瞬間、
この関係の温度が変わってしまいそうで。

だから、お互い言わなかった。


でも、伝わる

会えば分かる。

視線の向け方。
触れるタイミング。
離れる時の空気。

言葉なんかなくても、
十分すぎるくらい伝わっている。


優先してしまう

「今週、どこかで会える?」

その一言で、予定を調整する。

子供の予定。
家のこと。
夫の帰宅時間。

全部を見ながら、
彼との時間を先に確保している自分がいる。


彼も同じ

彼も、仕事の予定を動かしていた。

「午後なら空けられる」

「その日は時間作れる」

そんなふうに、自然に合わせてくる。

無理している感じがないのが、余計に怖い。


言葉より確かなもの

“会う”という行動そのものが、答えになっていた。

忙しい中で時間を作ること。

会えない週があるだけで寂しくなること。

また会った瞬間、安心すること。

それ全部が、
もう十分すぎるほど気持ちを表している。


未来の話はしない

お互い、未来の話はしなかった。

離婚するとか。
一緒になるとか。

そういう現実的な話は、一度も出ていない。


それでも

不安がないわけじゃない。

でも、今のこの関係を壊したくなかった。

変に名前をつけて、
重くしたくなかった。


暗黙のルール

深く聞きすぎない。
無理に確かめない。

でも、ちゃんと会う。

そのバランスが、
不思議なくらい心地よかった。


約束なんてないのに

「ずっと一緒にいよう」

そんな約束はしていない。

好きとも言っていない。

なのに——

次も会うことを、疑っていない。


言葉にしていないだけで。

私たちはもう、
十分すぎるほど繋がっていた。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第12話 彼も同じだった

戻った時間

会えなかった週が終わって、
やっと、いつもの流れが戻った。

数駅離れた場所で待ち合わせて、
彼の車に乗る。

いつもと同じ景色なのに、
少しだけ久しぶりに感じた。


一週間ぶり

「なんか、久しぶりな感じするね」

彼がそう言って笑う。

たった一週間。

それだけなのに、
少しだけ遠かった気がした。


軽い言い方

車の中で、ふと聞かれる。

「寂しかった?」

冗談みたいな言い方だった。

でも、本気で聞いているのが分かる。


隠しきれない気持ち

少し迷ってから、答えた。

「ちょっとだけ」

本当は、もう少しあった気がする。

でも全部は言えなかった。


同じだった

彼は、小さく頷いて。

「俺も」

そう言った。


安心

その一言で、力が抜けた。

自分だけじゃなかった。

同じように感じていた。

それが分かっただけで、
こんなにも安心するなんて思わなかった。


埋まる空白

部屋に入って、
いつもの距離に戻る。

触れられた瞬間、
空いていた時間が埋まっていく。

何も言わなくても分かる。

同じように、会いたかったこと。


落ち着く場所

「やっぱり落ち着くね」

彼がそう言う。

何気ない言葉なのに、
少しだけ胸に残った。


自分だけじゃない

ここが落ち着く場所になっているのは、
自分だけじゃない。

その事実が、静かに嬉しかった。


確信

会えなかった時間さえ、
意味があったように思える。

離れていたからこそ、
分かったことがある。


この関係は、ちゃんと続いている。

そう思ってしまった。


同じ温度で、
同じ気持ちで。

彼も、ここにいる。

そう信じられたことが——
何より安心だった。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第11話 会えない週が全てを狂わせる

崩れたリズム

その週は、会えなかった。

いつもなら、どこかの曜日で会っている。

自然に始まったはずなのに、
いつの間にか、それが当たり前になっていた。


たった一週間

「今週は難しいかも」

彼から来たメッセージ。

仕方がない理由だということは、分かっていた。

仕事の都合。
外せない予定。

責めるようなことじゃない。


思った以上に

それなのに——

思っていたよりも、引っかかった。

たった一週間。

それだけのことなのに。


落ち着かない

前なら、平気だったはずなのに。

少しくらい間が空いても、
こんなふうにはならなかった。

でも今は違う。

リズムが崩れるだけで、落ち着かない。


本当なら今ごろ

時計を見るたび、考えてしまう。

本当なら、今ごろ会っている時間。

車の中で話して、
もう部屋に入っている頃。

そんな想像ばかりが浮かぶ。


足りない

連絡は来る。

やり取りも、いつも通り。

でも——
足りない。

文字だけでは、埋まらない。


会える前提

少し前まで、これが普通だったはずなのに。

会わない日常。
それが、もう思い出せない。


気付いてしまった

私は——

この“会える前提”に、慣れすぎていた。

当たり前にあると思っていたから、
なくなった時に初めて分かる。


崩れていく感覚

たった一週間、会えないだけで。

こんなにも気持ちが揺れるなんて。


これは、ただ会いたいだけなんだろうか。

それとも——
もう、戻れないところまで来ているんだろうか。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第10話 普通になってしまった

気付けば、考えなくなっていた

前は、少しだけ迷っていたはずなのに。

これでいいのか。
どこまで進んでしまうのか。

どこかで引っかかっていた感覚が、確かにあった。

でも今は——
もう、何も思わない。


特別じゃなくなった関係

彼に会うことを、特別だと思わなくなっていた。

予定を合わせることも、
時間を作ることも、
全部が自然にできてしまう。

無理をしている感覚がない。


会う理由

「会いたい」

その気持ちに、理由を探さなくなった。

寂しいからでもない。
刺激がほしいからでもない。

ただ、会う。

それだけで、一日がちゃんと整う。


終わりを意識しない

前は、帰る時間が少しだけ寂しかった。

でも今は違う。

「また会える」が前提になっている。

だから、終わりを終わりだと思わなくなった。


途切れない感覚

会っている時間も、
会っていない時間も。

完全には離れていない気がしている。

やり取りがなくても、
どこかで繋がっている。

そんな感覚が、当たり前になっていた。


消えてしまった境界線

おかしいことをしている。

その事実だけは、ちゃんと分かっている。

でも——

分かっているだけだった。

そこに痛みも、罪悪感も、
ほとんど残っていない。


慣れてしまった

たぶん、慣れてしまったんだと思う。

彼がいることに。
この関係に。
この時間に。


失いたくないもの

それでも、ひとつだけ確かなことがある。

失いたくない。

はっきり言葉にしなくても、
それだけは分かる。


普通の定義

どこからが普通で、
どこまでが間違いなのか。

もう、その線が分からない。


ただ——

このままでいたい。

そう思っている自分だけが、
やけにはっきりしていた。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』 第9話 どちらが本当の自分

いつもの時間

朝、子供たちを送り出して、
いつものように家のことを終わらせる。

時計を見る。

まだ時間があるのに、
もう外に出る準備をしている。

考えるまでもなく、
体が先に動いていた。


向かう先

数駅離れた場所。

彼の車に乗り込むと、
それだけで気持ちが軽くなる。

何も変わらないはずの一日なのに、
ここから先は、まったく別の時間になる。


自分でいられる場所

部屋に入ると、自然に力が抜ける。

何も背負わなくていい。

母でもなく、
妻でもなく。

ただ、自分でいられる。

そんな感覚が、当たり前になっていた。


作らなくていい時間

家では、いつも何かを気にしている。

子供のこと。
夫のこと。
やるべきこと。

でもここでは、違う。

何も考えなくていい。

ちゃんとしなくてもいい。

それでも、受け入れられている。


比べてしまう

ふと、思う。

どっちが本当なんだろう。

家にいる自分と、
ここにいる自分。

どちらも嘘じゃないはずなのに、
重さが違う。


軽くなっていく

ここにいると、
心が軽くなる。

笑うことも、話すことも、
無理をしていない。

自然にできる。

その感覚が、少しずつ広がっていく。


戻る時間

帰る時間になると、
少しだけ現実に引き戻される。

車を降りて、
駅に向かって歩く。

さっきまでの空気が、遠くなる。


家に帰って

玄関のドアを開ける。

いつもの景色。
いつもの空気。

何も変わっていないはずなのに、
少しだけ違和感がある。


ズレ

ここが“帰る場所”のはずなのに。

なぜか、しっくりこない。

さっきまでいた場所の方が、
自分に近かった気がする。


気付いてしまった。

私は——

あの時間の方が、好きだ。


それは、ただ楽なだけなのか。

それとも——
本当の自分に近いだけなのか。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』 第8話 「またね」が軽くなる

終わりのはずなのに

最初の頃は、帰る時間が近づくと、少しだけ寂しかった。

「もう帰るね」

その一言が、どこか重かった。

でも——

今は、少し違う。


当たり前の約束

「またね」

自然に出るようになった言葉。

深い意味なんて込めていないのに、
その一言だけで、次が決まる。

いつ会うかも、
細かく決めなくなった。

それでも、不安はなかった。


終わりじゃない

別れる瞬間が、終わりじゃなくなっている。

ドアを出ても、
車に乗っても、
家に帰っても。

やり取りは続く。

会話も、気持ちも、途切れない。


距離の変化

離れている時間が、前より軽くなった。

寂しさが消えたわけじゃない。

でも、それよりも——
「またすぐ会える」が勝つ。


感覚のズレ

普通なら、ここで不安になるはずなのに。

なぜか、ならない。

むしろ、安心している。

この関係は続く。

どこかで、そう思っている。


ふたりのリズム

連絡のタイミングも、会う流れも、
すべてが自然に回っている。

無理をしていないのに、途切れない。

気付けば、彼とのやり取りが、
生活のリズムになっていた。


深くなっているのに

関係は、確実に深くなっている。

一緒にいる時間も、増えている。

それなのに——

「重い」と感じる瞬間がない。

むしろ、軽い。


軽さの正体

「またね」

その言葉の軽さに、
少しだけ違和感を覚えた。

前は、もっと意味を持っていたはずなのに。


気付かないふり

でも、その違和感を深く考えなかった。

考えたところで、何も変わらない。

それよりも、
次に会うことの方が大事だった。


「またね」

そう言って別れることに、慣れていく。

終わりじゃない関係に、
安心している自分がいる。


それは、余裕なのか。

それとも——
もう抜け出せなくなっているだけなのか。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第7話 何もかも、合いすぎている

似ている感覚

最初に思ったのは、たぶん「楽」だった。

無理をしなくていい。
気を遣いすぎなくていい。

言葉を選ばなくても、
ちゃんと伝わる。

そんな感覚が、自然にあった。


タイミング

話すタイミングも、笑うタイミングも、
不思議なくらい同じだった。

どちらかが何か言おうとすると、
同じことを考えている。

そんな瞬間が、何度も重なる。

偶然にしては、多すぎると思った。


沈黙が苦しくない

何も話していない時間も、
嫌じゃなかった。

むしろ、落ち着く。

隣にいるだけでいいと思える関係なんて、
初めてかもしれない。


比べてしまう

こんなふうに自然でいられる相手が、
他にいたことがあっただろうか。

ふと、考えてしまう。

夫といた時間。
これまでの関係。

どれとも違う。


体温

近くにいると、安心する。

触れていると、落ち着く。

その感覚が、言葉よりも確かだった。

説明できないのに、分かってしまう。


確信に近いもの

「合うね」

彼が、何気なく言った。

軽い言い方だったのに、
その一言がやけに残る。

私も、同じことを思っていたから。


特別じゃないのに

何か特別なことをしているわけじゃない。

派手なデートでもないし、
特別な場所でもない。

それなのに——

ここにいる時間が、
一番しっくりくる。


ふたりの感覚

無理をしていない。
背伸びもしていない。

ただ、そのままでいられる。

それが、こんなにも心地いいなんて思わなかった。


名前をつけたくなる

これは、何なんだろう。

ただの関係、ではない気がする。

でも、言葉にしてしまうと、
壊れてしまいそうで。

はっきりさせるのが、少し怖い。


それでも

考えなくても分かる。

私は、この人に惹かれている。

そして——
たぶん、彼も同じだ。


この関係に、名前をつけるなら。

それは、間違いなんだろうか。

それとも——
やっと出会えたものなんだろうか。

続きはまた次回。

『婚外恋愛』第6話 気づけば、そこが私達の居場所

朝の待ち合わせ

朝、子供たちを送り出したあと。

いつも通りに家のことを済ませて、
何も変わらない顔で外に出る。

数駅離れた場所。

誰にも会わないように選んだ駅で、
彼の車を待つ。

少しして、見慣れた車が止まる。

何も言わずにドアを開けて、
当たり前のように助手席に乗り込む。

「おはよう」

その一言で、もう空気が変わる。


いつもの流れ

途中のコンビニに寄るのも、
いつの間にか決まった流れになっていた。

コーヒーと、軽く何かを買って。

どっちが払うかも、なんとなくで決まる。

特別なことは何もない。

ただ、自然に隣にいる。

それだけで、満たされている。


迷いのない足取り

車が止まる場所も、もう迷わない。

初めてのときにあった戸惑いは、
どこにも残っていなかった。

当たり前のように降りて、
当たり前のように中へ入る。

隣に彼がいる。

それだけで、何も考えなくていい。


変わってしまった感覚

最初は、少しだけ特別な場所だったはずなのに。

今はもう、違う。

ここに来ると落ち着く。

ここに来ると、戻れる。

そんな感覚に変わっていた。


ふたりでいる時間

部屋に入ると、空気が緩む。

外ではできない距離で、
何も気にせず隣にいられる。

言葉は多くなくてもいい。

視線と、空気と、距離で分かる。

ここにいる時間だけが、
ちゃんと繋がっている気がした。


合いすぎている

不思議なくらい、合っていると思った。

無理をしていないのに、心地いい。

沈黙も自然で、
どこにも違和感がない。

こんな関係、知らなかった。


日常になっていく

週に何度も繰り返すうちに、
この時間が“特別”じゃなくなっていく。

むしろ、ここに来ない日の方が落ち着かない。

会うことが前提の生活。

そんなふうに変わっていった。


境界が曖昧になる

家にいる時間と、
彼といる時間。

どちらも同じ一日なのに、
重さが違う。

どっちが現実なのか、
分からなくなる瞬間があった。


ふたりの居場所

ここでは、何も背負わなくていい。

母でもなく、妻でもない。

ただ、自分でいられる。

ただ、彼といられる。


気付けば——

この場所が、
一番落ち着く場所になっていた

続きはまた次回。