前回のブログの補足と、グリーフケアを体験いただいた感想を綴りました。
私たちは日々、様々な『喪失』と出会いながら生きています。
大切な人との死別、離婚や別れ、関係性の終わり、災害や病気による生活の変化…。
表面には出てこなくても、胸の奥に沈んだまま言葉にならない悲しみ。。。
それが グリーフ(悲嘆)です。
グリーフケアとは、その抱えきれない悲しみを安全にゆっくりとほどき、心が再び力を取り戻す為のセラピーです。
医療・福祉・教育・葬祭など様々な場で取り入れられていますが、近年はカウンセリングや心のケアでも必要性が高まっています。
どんな方に向いているの?
たとえば、次のような経験をした方に、グリーフケアは大きな助けになります。
- 死別:家族、恋人、友人、ペットなど大切な存在を失った時
- 別離:離婚、関係性の断絶など
- 喪失体験:災害・病気・失業・引っ越しなど生活基盤の大きな変化
グリーフは『死別』だけではありません。
心が “これまで通りの自分ではいられなくなった瞬間” に、人は深い悲嘆を抱えるのです。
先日お受けしたグリーフケアセッションでのこと
先日、グリーフケアのセラピーを受けに来られた A 様のお話を伺いました。
A 様には、亡くなったお姉様とお兄様ががいらしたそうです。
お兄様は実の兄ですが、お姉様はお父様の前妻との子で、お姉様の話題が家庭で語られる事は殆ど無かったとの事。
しかし昨年、お墓参りの際にある出来事が起こります。
墓誌(霊標)を磨いていると、A 様の 次女の誕生日とお姉様の命日が同じ だという事に気付き、父にふと『同じ日なんだね』と話したそうです。
その時、普段は多くを語らないお父様が、ぽつりと胸の内を明かされました。
『本当はね…お腹の中で亡くなってしまって、抱いてあげる事も出来なかったんだ』
『だから、同じ日に生まれた A 様の次女を見た時。。。あの子が生まれ変わって戻ってきてくれた気がしたんだよ』

普段は強く、頼りがいがあるお父様の思わぬ告白に、A 様は驚きと同時に胸の奥がぎゅっと締めつけられたそうです。
『家族の中で、誰よりも父が深く傷ついていたのかもしれない』
そう感じたと話して下さいました。
また、お姉様は『両親に抱かれる事も無く旅立ってしまったからこそ、お父様はA様の次女には沢山抱っこしてあげようと思った』とも話されていたそうです。
セラピーに入ると見えてきたもの
セッションでは、意識をゆっくりと深い潜在意識へ誘導し、心の奥にある感情へ優しくアクセスしていきます。
誘導が進むにつれ、A 様はそっと目を閉じながら『女の子の顔が見えます』と静かに語り始めました。
その子は、A 様がお姉さまだと感じている存在。
驚くほど自然に、そして優しく言葉を交わす事が出来たそうです。
そして、長く胸にあった疑問を A 様は尋ねました。
A 様は4人兄弟で妹と弟がいらっしゃいます。
『妹弟が何人もいるのに。。。どうして“私のところ”へ来たの?』
その問いに対し、お姉さまはとても穏やかな表情で、こう答えられたそうです。

『あなたの中にある“優しさ”と“強さ”を、私は知っていたの。
あなたなら私の気持ちを受け取り、家族に伝えてくれると分かっていたから』
A 様の頬には静かに涙が流れました。
涙は『悲しみ』だけのものではありません。
長い間凍っていた感情が、ようやく溶け始めたサインでもあります。
見えない悲しみは、話した瞬間から癒え始める
グリーフケアのセションでは、亡くなった方と再会するというよりも、“置いてきてしまった気持ちを拾い直す作業” をします。
言えなかった気持ち、分からないままにしていた想い、本当は抱きしめたかったのに出来なかった感情、『なぜ?』という問い。。。
これらは、心の深い所に沈んだまま、人生に影響を与え続ける事があります。
ですが、言葉にした瞬間、涙が流れた瞬間、長く止まっていた時間がまた動き始めます。
A 様は最後に、
『お姉ちゃんの存在を感じられたのが嬉しいです。姉の想いだけでなく、温かさを感じられました』
と微笑んで帰っていかれました。
グリーフケアは “前を向くためのセラピー”
誰かを忘れるためではなく、その人の存在を心の中で優しく位置づけ直し、これからの人生を安心して歩める様にする。
それがグリーフケアです。
悲しみは、『弱さ』ではありません。
大切に想っていた証であり、愛そのものです。
もしあなたの心にも言えなかった想い、消化できずに残ってしまった感情があるなら、どうか一度、ゆっくりと心を整える時間を作ってみませんか。
あなたの大切なものは、今も心と共にあります。
そしてその想いは、必ず未来への力となります。
羊乃 愛癒 (ひつじの めい)



